日南海岸に面する“塩害に悩む”国名勝の神社にチタン材が初採用、新日鐵住金導入事例

新日鐵住金のチタン材は、宮崎県・日南海岸内の海岸に面する国が指定した名勝となっている神社の屋根材に採用された。

» 2019年01月18日 14時00分 公開
[BUILT]

 新日鐵住金は、同社のチタン材が、宮崎県日南市の「鵜戸神宮 住吉神社」の屋根材として採用されたことを公表した。

塩害に強く、意匠性に優れる緑青発色チタンが採用

 チタン材が導入されたのは、鵜戸神宮の洞窟内本殿脇にある住吉神社と、楼門すぐ近くの吾平山上陵(あひらのやまのうえのみささぎ)の看板屋根。施工面積は約20m2(平方メートル)で、チタンの使用量は50kg(キロ)。江口板金工業による施工のもと、銅製からチタン製(緑青発色)への屋根葺き替え工事が完了した。仕上げは、アルミナブラストと発色による緑青仕上げで行った。

 鵜戸神宮を含む鵜戸地区一帯は、国の名勝に指定されており、今回の葺き替え工事は名勝内の建築物にチタンが採用された初の事例となる。

チタン葺き替え工事後の住吉神社 出典:新日鐵住金

 名勝の鵜戸神宮は、日向灘に面した風光明媚な国定公園「日南海岸」内にあり、自然の神秘な洞窟の中に本殿が鎮座している神社。海に面しているため、銅製の屋根葺き替え後、わずか数年で腐食が始まってしまう厳しい塩害地域で、25〜30年ごとに屋根改修を行う必要があり、これまで建物の維持管理・保護に苦慮してきた。

工事前の塩害にさらされた住吉神社屋根 出典:新日鐵住金

 チタン材は、潮風や紫外線に対して、他素材と比べて高い耐久性を有する。長期的に建築物を保護するため、維持管理費用の軽減に貢献。さらに新日鉄住金製のチタン材は、伝統建築にふさわしい“緑青発色チタン”の外観も評価されたことで、チタン材への葺き替えが実現した。

 今後は、県指定文化財である鵜戸神宮本殿屋根を含む、神宮内の他の建物へチタン採用を提案する以外にも、日本全国で同様の課題を抱える沿岸部の建築物へ適用拡大を進めていくとしている。

 新日鉄住金製では、意匠チタン材に特化したラインアップ「TranTixxii(トランティクシー)」を展開している。トランティクシーは、チタンの基本特性である軽量(比重は、鉄の60%、銅の50%ほど)に加え、酸性雨による変色が起きにくく、ロールダルやブラストなど多様な仕上げ・色などの意匠性も併せ持つ。また、優れた耐久性と耐変色性により、「LCC改善」(メンテナンスの負荷軽減)につながるメリットもある。

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