三井不動産が“イスラエル軍”発ベンチャーのビル管理セキュリティシステムを実物件で検証

三井不動産は、ビルの中央監視などビルディングオートメーションシステム(BAS)向けのサイバーセキュリティ監視システムを自社保有の複合施設に試験導入し、サイバー攻撃対策や運用手法策定のための検証作業を行う。この検証を通して、街づくりを通した持続可能な社会の構築に加え、テクノロジーの活用による不動産業のイノベーションを強力に進め、安心・安全なスマートシティーの実現を目指す。

» 2019年04月08日 10時22分 公開
[BUILT]

 三井不動産は、ビル管理システム向けに、イスラエルのベンチャー企業が開発したサイバーセキュリティ監視システム「SCADAfenceプラットフォーム」を、首都圏の複合施設1棟に試験導入する。施設では、サイバー攻撃への対策や運用手法を策定するための検証を行う。

サイバーセキュリティ対策は、「ビル管理の安全計装の一部」

 システム導入および検証は、三井不動産が2015年に設立したCVCファンド「31VENTURES Global Innovation Fund 1 号」を通じて出資しているイスラエルのスタートアップ企業「SCADAfence」と、日立ソリューションズ、国内セキュリティコンサルティングの三井物産セキュアディレクションの4社で連携して実施する。

Johannes Plenio/Pixabay

 近年は、ビルマネジメント領域へのIoT化が加速化しているが、外部のネット環境と接続することで、ハッキングなどのサイバーセキュリティリスクが高まっている。そこで、三井不動産は、サイバーセキュリティ対策を「ビル管理の安全計装の一部」と捉え、今回のビル管理システム向けセキュリティ監視システムを三井不動産が保有する複合施設1棟へ試験的に導入した。サイバー攻撃への監視に加え、システムによって発見された「脆弱(ぜいじゃく)性」への対策、さらにビル管理システムの安全性を脅かすことにつながる可能性のある全ての予兆から「実際のビル管理の現場における対応・運用手法の確立」を見据えた実地でのテストを行う。

 サイバーセキュリティ監視システムは、2014年にイスラエル軍サイバーセキュリティ開発部門の出身者が設立したSCADAfenceの独自プロトコル解析技術を採用。通常の解析では検知することが困難な“平時の通信を装ったサイバー攻撃”の発見が可能になる。ビル管理システムの正確な情報取得と通信状況、構成変更を監視し、ビル管理システムに起因する事故を未然に防ぐための継続的な監視を行う。

 なお、SCADAfenceが提供するセキュリティのソフトウェア「SCADAfenceプラットフォーム」は、独自プロトコルの解析技術で、大規模ネットワーク内に存在する数千を超える産業資産に対し、単一のシステムでセキュリティ対策を実現。多様化する管理工程でも、それらの振る舞いを正しく学習し、解析を行う、独自のアルゴリズムを有し、これらの一連の情報をグラフィカルに表現するユーザーインタフェースも特徴となっている。

 また、既存のネットワークやファイアウォールなどのセキュリティ機器に対する変更をする必要が無く、ソリューション導入のしきいも低い。

 2019年4月には日本語版をリリースし、国内での正式な事業開始が予定されている。事業展開に先立ち、2018年10月には、SCADAfenceの日本事業所を開設し、三井不動産とグローバル・ブレインの3社は協力関係のもと、同ソリューションを利用する企業に対する万全なサポート体制を構築する準備に入っている。

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