ダイバーシティーに取り組む建設業3社が表彰、離職率の大幅減やシニアの活躍推進など

経済産業省が主催している2018年度の「新・ダイバーシティー経営企業100選」で24社が表彰され、このうち建設業では3社が選定された。建設業で選ばれたのは、住友林業(東京都)、増木工業(埼玉県)、向洋電機土木(神奈川県)。

» 2019年04月11日 09時31分 公開
[BUILT]

 2018年度の「新・ダイバーシティー経営企業100選」が発表された。合計24社が表彰され、このうち建設業では3社が選出された。

 経済産業省は、2012年度から“ダイバーシティー経営”に取り組む企業の裾野拡大を目的に、多様な人材の能力を生かして価値創造につなげている企業を表彰する「ダイバーシティー経営企業100選」を実施している。2015年度からは今後、広がりが期待される分野の重点テーマを設定した「新・ダイバーシティー経営企業100選」を開催し、両テーマ合わせ、6年間で226社が選定されている。

 ダイバーシティー経営とは、多様な人材を生かし、その能力が最大限に発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営のこと。新100選で求めている重点テーマは、経営層の多様な人材の登用、キャリア多様性の推進、外国人/シニアの活躍が設定されていた。

 2018年度の表彰は、同年7月17日に募集を開始し、9月下旬〜10月に1次書類審査、2019年1月のプレゼンを経て、同年3月22日に選定企業を発表した。

増木工業は、1人当たりの付加価値額も“114%増加”

 建設業の表彰企業のうち、総合建設業の増木工業は、社員数50人を目指し、採用数を増加させたものの、急激に社員数が増えたゆがみによって退職者の増加に直面。働き続けられる環境を整備し、2011年にメンター制度である「共育担当者」制度を採り入れ、新入社員に対し先輩社員がメンターとして、仕事やプライベートの相談に乗れるようにした。

 結果、入社3年後の離職率を大幅に抑制させ、売上総利益や粗利の上昇はもちろんのこと、1人当たりの付加価値額も2012年5月期の約715万円から、2018年5月期には約818万円へと114%増加した。

住友林業の定年退職者と職種をマッチングする「かいかつWeb」

 住友林業は、「木」という再生可能な自然素材を活用し、人々の生活に関する幅広い事業をグローバルに展開している。今後も、持続可能な成長を実現するためには、それぞれの事業領域において、専門的知識やスキルの高い人財育成と定着が不可欠と判断し、2013年には「働きかた支援室」を設置。2017年には、同社の「行動指針」で、多様性の尊重や健全な職場環境を強調するメッセージを発信し、さまざまな事情を抱える社員にとって働きやすい環境整備を本格化させた。

 具体的な取り組みでは、定年退職者と職種のマッチングシステム「かいかつWeb」を導入し、2017年度から運用をスタート。各部署がシニア社員を雇用したい職種と、経験や資格などのスキル条件を公開し、定年後に再雇用を希望する社員が、その中から自身に適した職種を探し、応募するという仕組み。

 また、2018年4月には、定年再雇用期間を満了した66歳以上の社員、年齢に関わらず、同社を離職した元社員を対象に「シニア人財バンクセンター」制度を開始。このセンターでは、会社が必要とし、本人が希望する場合に人材を登録し、社内部署と業務内容、雇用条件をベースに個別にマッチングを行う。70歳の到達年度末まで勤務が可能で、工事管理などの技術系や管理系の有資格者、特に専門性が高く経験豊富な人材の確保につながっている。

人事制度改革、キャリア意識の形成、テレワークで売上倍増

 3社目の向洋電機土木は、創業以来、順調に事業を拡大してきたが、2008年に発注元であった業界中堅の建設会社が破産したことで危機感を覚え、取引先のさらなる拡大を見据え、能力に見合った評価制度の改革やキャリア意識の形成、スキルの向上、柔軟な働き方を可能にする環境構築を通じ、取引先および収益の拡大を図った。社員の技術力向上に対する意識が低いことも課題であったため、社内改革を行うことを決意し、銀行から紹介を受け、改革を主導する人材を異業種から招聘(しょうへい)して改革に着手した。

 具体的には、属人化したノウハウの特定・共有と、それを支える人事制度改革(マニュアル・スキルマップの作成、人事評価制度の変更など)、キャリア意識の形成とスキル向上のための環境整備(個人面談・家族面談、社内イベントへの家族招致、下請け先社員も含めた講習会など)、柔軟な働き方を可能にするテレワーク(現場事務所のサテライトオフィス化、電話の内線転送、デジタルデバイス貸与)などを実施。成果として、2008年約8億だった売り上げから、2018年には約16憶まで拡大。社用車関連コストなど固定費の削減を実現した。応募者数も中途600人と新卒300人で、社員定着率の改善による組織構造の変化がもたらされた。

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