年々深刻さを増す、太陽光発電所の銅線ケーブル盗難。その対策にファーウェイが動き出した。太陽光発電と蓄電池による自立給電と無線通信、最新鋭のAIカメラを組み合わせた注目のソリューションだ。
太陽光発電所の運営において大きな問題となっている銅線ケーブルの盗難。当初は北関東や千葉県、福島県などでの犯行が目立ったが、国際的な銅価格の高騰を背景に、いまや被害は日本全国に広がっている。
日本損害保険協会が2024年2月に公表した調査結果(※1)によると、2021年度から盗難による被害が急増しており、2022年度は5年前の約20倍の保険金が支払われている。以降も被害件数は増加の一途で、収まる気配は一向に見えない。盗難リスクが高まることで太陽光発電向けの保険料も上昇するなど、銅線ケーブル盗難は全ての太陽光発電事業者に関わる深刻な問題になっている。
※1「太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果」
狙われる太陽光発電所の多くは人里から離れた中山間地域などにあるため、盗難対策として遠隔地から状況を把握できる監視カメラが必須だ。ただし監視映像の管理センターは遠方にあることが多く、侵入者がリアルタイムに見えたとしてもすぐに現場に駆け付けて盗難を阻止することはできない。そのため、ただの監視カメラではなく音や光で侵入者に警告を与えるといった犯罪抑止力があるセキュリティシステムが求められている。
ケーブル盗難は年々計画的かつ組織的になっており、窃盗犯は犯行に先立って現地を下見することがほとんどだといわれている。高度なセキュリティシステムの存在は、被害に遭うリスクを下げることにも直結する。
とはいえ、セキュリティシステムとして機能する監視カメラが設置されている発電所はまだ少ない。そこには、太陽光発電所ならではの難しさがあるという。
太陽光発電所オーナーやEPC事業者からの相談を受けてケーブル盗難対策を検討してきたイグアスの齋藤怜央氏は、その理由を次のように話す。
「窃盗団に狙われやすい野立ての太陽光発電所に監視カメラを設置する場合、カメラの性能に加えて通信環境の整備やシステムを運用するための電源の確保、広大な敷地に配線を敷くためのコストが大きな課題となっています。そのシステムには、夜間にやって来る不審者を的確に検知・識別できる能力も求められます」
ファーウェイが日本での展開を開始した「太陽光発電所向け自立給電無線監視ソリューション」(以下、監視ソリューション)は、こうした太陽光発電所ならではの課題に正面から向き合うものだという。イグアスは監視ソリューションの国内販売を手掛けることをいち早く決めており、齋藤氏は「このソリューションなら盗難問題に悩む発電所オーナーに、自信を持って推薦できます」と笑顔を見せる。
イグアスは、パワーコンディショナーや蓄電池を中心に太陽光発電に必要なシステムをトータルに提供するサプライヤーとして急速に太陽光発電業界での存在感を高めている。もともとIBMのサーバやストレージなどのITインフラソリューションの提供で知られている企業で、近年はクラウドやAIなどの最先端ソリューションにも力を入れている。それだけに、AIカメラに向ける目には厳しいものがあった。
「当社は各種監視カメラを扱ってきましたが、太陽光発電所に特化した製品は存在せず、それぞれに一長一短がありました。しかし、ファーウェイの監視ソリューションは太陽光発電所向けに開発されたものであり、発電事業者やEPC事業者のニーズにかなうものになっています」
ファーウェイの監視ソリューションは、
で構成される。これらが高さ5〜6メートルほどのポールにセットされており、発電所の規模に応じて複数台設置することで全体を守る仕組みだ。
電力は太陽光発電で確保するため、電源設備を別途設ける必要がない。通信は各ポールに組み付けられたメッシュWi-Fiで行うので、各種配線の施工も不要だ。まさに“自立型”の監視ソリューションと言える。齋藤氏は、「電源も通信も配線が不要なので設置が容易であり、数日で導入できます。配線に伴う制約がなくどこにでも設置できるので、銅線ケーブルなどの盗難に遭いやすい設備回りを重点的に監視するなど、より効果的な対策が可能です」と、そのメリットを強調する。
監視部には、シンガポールのHolowitsの最新AIカメラを採用した。Holowitsは多次元データ分析技術に基づくAIカメラ、ビデオプラットフォーム、クラウドサービスのグローバルプロバイダーだ。
AIカメラはただ撮影・録画するだけの防犯カメラとは異なり、不審者が特定エリアに侵入していることを検知するとカメラ内の大音量スピーカーから警告音やメッセージを流したり、高輝度LEDライトを光らせたりできる。不審者を威嚇し、盗難を防ぐことを重視したカメラだ。監視カメラとしての基本性能も優れており、赤外線によって夜間でも150メートルの長距離監視が可能。IRイルミネーターを内蔵し、夜間撮影においても鮮明なナイトビジョンを提供する。
齋藤氏は、「不審者の侵入検知においてはターゲット分析が重要」だと話す。ターゲット分析を正しく行わないとイノシシなどの野生動物にもセキュリティシステムが反応してしまい、不審者の特定に信頼を置けなくなってしまう。AIを駆使した同カメラは人検出の精度に秀でており属性分析や人数カウントもできるので、侵入者を的確に捕捉する。
電力給電部と通信部はファーウェイ製品で構成されている。
各ポールにセットされる電力供給用機器は、最大出力535Wの単結晶太陽光パネル2枚と電源モジュール、定格放電電力3000Wのリン酸鉄リチウムイオン蓄電池2台だ。太陽光パネルによる蓄電池への充電は、晴れていれば6時間程度で完了する。フル充電できれば、悪天候が続いても1週間程度は運用が可能だという。
この監視ソリューションは、ファーウェイが携帯電話基地局の運用を通して培ってきた技術に立脚している。同社はエベレスト山腹の標高6500メートル地点や北極圏、灼熱(しゃくねつ)の砂漠地帯や高温多湿な島しょ国など、さまざまな過酷な環境に携帯電話基地局を設置してきた。
無線通信はファーウェイが最も得意とする領域だ。各ポールのAIカメラが捉えた情報は管理センターにリアルタイムで送られ、不審者を検知すると管理者にアラートを発する。各ポールはメッシュWi-Fiでつながっており、1ポール当たり5キロメートル×8ホップが可能で、最大40キロメートルの超長距離ネットワーキングを実現する。
これだけの通信距離があれば、どんなに大規模な太陽光発電所であってもフルカバーできるだろう。無線通信によって、光ファイバーやLANケーブルが到達できない場所にもネットワークを簡単かつ迅速に構築できる。
小規模発電所向けとして、メッシュWi-Fiを使わずLETルーターで無線環境を構築する通信ソリューションも用意されている。
監視ソリューションはAIカメラと自立電源、無線通信がセットになったオールインワンタイプの防犯システムだ。電源や通信配線は不要なので、どんな規模の発電所にも簡単に導入できる。とはいえ、既存設備から給電できるケースや既に有線通信環境が整っている設備もあるだろう。そうした場合は、「監視部と通信部のみ」「監視部と給電部のみ」というように、必要な要素だけ導入することも可能だ。
「お客さまの設備環境に応じて柔軟にシステムを構築できるところも監視ソリューションの魅力であり、高いコストパフォーマンスを実感していただけるでしょう」(齋藤氏)
同氏は、イグアスが監視ソリューションの提供をいち早く決めた理由として、ファーウェイ製品全般に共通する故障の少なさとサポート体制を挙げる。
「ファーウェイのパワーコンディショナーといった蓄電システムの故障率が極めて低いことは、太陽光発電業界にいる人なら誰もが知るところでしょう。当社もファーウェイのさまざまな製品を取り扱ってきましたが、故障の心配がほとんどないという安心感はとても大きなメリットだと感じています。導入時のサポートやアフターサービスも充実しているので、お客さまに安心してお届けできます」
ファーウェイは監視ソリューションを日本に投入するに当たり、銅線ケーブルの盗難被害が多発していた茨城県のメガソーラーなど数カ所で実証実験を行った。その良好な結果と現場の声を受けて、いよいよ2024年に一般販売を本格的に開始した格好だ。
日本での実績はこれからだが、既に中国では多くの現場で使われており高い評価を得ているという。日本においても、銅線ケーブル盗難対策の切り札として監視ソリューションが大きな役割を果たすことは間違いない。ファーウェイとイグアスはパートナーシップをいっそう強化し、太陽光発電所の盗難問題に全力で取り組んでいく考えだ。
<取材協力:株式会社イグアス>
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