国内でも導入が広がったバイオマス発電だが、利用する木質燃料の持続可能性の確保が大きな課題として指摘されている。そこでいま注目されているのが、科学的に裏付けられた持続可能性や信頼性、トレーサビリティが確保されたカナダ産木質ペレットの活用だ。
日本のバイオマス発電は、2012年の固定価格買取制度(FIT)を契機に急速に拡大し、導入容量は約4.5倍に増加した。再生可能エネルギー全体で見ても、その伸び率は太陽光に次ぐものであり、現在では日本の発電電力量の4.1%(2023年度速報値)を担うに至っている。
経済産業省が2024年12月に示した新たなエネルギー需給見通しによると、2040年度におけるバイオマス発電の比率は5〜6%とある。数字だけを見ると簡単に達成できそうにも思われるが、バイオマス発電事業には当初想定されていなかった課題も生じており、その解決は必ずしも容易ではない。
日本各地で進んだバイオマス発電所の建設だが、国産のバイオマス燃料には供給量の面で限界がある。そのため国内のバイオマス発電事業は、パーム椰子殻(やしがら、PKS)や木質ペレットなど、輸入木質バイオマス燃料に依存するところが大きい。また近年ではPKSの調達が難しくなってきたこともあり、木質ペレットの輸入量が増加傾向にある。
こうした状況の中で課題となっているのが、輸入木質バイオマス燃料の持続可能性だ。長期的な安定調達の実現だけでなく、木質バイオマス燃料の供給源である森林そのものの持続可能性を守ることが大きな課題となっている。FIT/FIP制度においても、国内の事業で利用するバイオマス燃料について、環境・社会・労働・ガバナンスなどについて担保すべき事項を整理し、持続可能性に関する客観的な基準を設けていく方針が示されている。
また、2025年4月1日から施行される改正クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)において、事業者には「合法性が確認された燃料を調達・使用すること」が義務付けられることとなった。具体的には違法伐採による木材など、不適切な原料由来ではないことを証明する認証情報の活用が必須要件に加わった。
このように輸入木質バイオマス燃料に対し、これまで以上に厳格な利用基準が設けられることとなった。そこで改めて注目を集めているのがカナダ産の木質ペレットの活用だ。
財務省の貿易統計によると、日本の木質ペレットの輸入量は、年間約580万トン(2023年)にのぼる。輸入元を国別で見ると、ベトナムが45%と1位で、カナダは27%で2位となっている。供給力や価格面の優位性から、輸入先国のトップを走ってきたベトナムだが、近年は、同国の大手ペレット製造企業による認証偽装問題が明らかになるなど、合法性や持続可能性についてのリスクが懸念されている。こうしたリスクを回避でき、持続可能性を確保した燃料の調達先として、カナダ産の木質ペレットに注目が集まっているのだ。
カナダ産の木質ペレットのサプライヤーは、国際的な森林管理団体であるFSCによる森林管理認証を有するとともに、カナダ規格協会(CSA)と持続可能な森林イニシアチブ(SFI)というPEFC森林認証制度によって認証された同国の2つの森林管理規格により、複合的に認定を受けている。さらに欧州やアジアに輸出を行うカナダの木質ペレット生産者は、持続可能なバイオマスプログラム(SBP)による第三者認証も取得している。SBPは2013年に設立された制度で、主に大規模発電に用いられる木質バイオマス燃料を対象に、合法的かつ持続可能なものであることを証明する国際的な認証制度だ。
木質ペレットを生産する民間企業だけでなく、カナダは政府も持続可能な森林管理の実現に向けて、積極的な取り組みを推進している。同国政府は早くから厳格な森林管理計画と法規制を運用し、業界の規律ある成長を後押ししてきた。第三者認証の活用と政府によるリーダーシップのもと、森林そのものから木材を利用するエンドユーザに至るサプライチェーンの全段階において、木質ペレットの合法性と持続可能性を担保し続けてきたのだ。
また、カナダの認証制度は企業だけでなく市民なども参加する、バランスのとれたガバナンスを持つ理事会のもとで、定期的に規格の改定が行われている。同国の森林政策は、官民の密接な連携による持続可能な森林管理を中核とし、その根底には森林の健康と多様性を守るという揺るぎない理念が息付いている。
カナダの全森林面積は3億4800万ヘクタールで、ロシア、ブラジルに次ぐ世界3位の森林大国だ。国際的な認証を受けた森林の面積は、推定1億5800万ヘクタールと世界でも有数の実績を持つ。さらに年間伐採面積は全森林面積の0.2%程度なので、伐採によってカナダの森林が失われることはないという。
この0.2%という割合は、木質ペレット用途のみならず、あらゆる製品や材料のために伐採した森林面積の合計となっている。同国の木質ペレットは、この0.2%相当の原木を製材工場で加工した後の廃材や、林地残材から製造されているのだ。具体的には原材料の85%を製材工場などで排出される廃材から、残りの15%は小枝や火災損傷材などを利用している。つまりバイオマス燃料のためだけに、中・上級の木が伐採されることは一切ないというわけだ。
なお各州政府はカナダ政府の森林管理計画のもと、長期的に持続可能な伐採量を確保するため、定期的に総合的な木材供給量の審査を実施している。現存する森林の状態や生育速度など、複数の観点から検証を行い適切な伐採量を決定している。
またカナダでは法律により、伐採後の植林など森林再生への取り組みが全国的に義務付けられている。苗木は伐採された樹種とその地域の自生種を適切に組み合わせ、森林が元来の姿を保持できるようにプランニングされる。まさに持続可能なバイオマス資源と言えるだろう。
原木1本1本の価値を最大限に生かすカナダの林産業では、さまざまな事業者が連携して、伐採木の価値を存分に引き出す取り組みを進めている。例えばまず生産者が原木の質を評価し、最適な製造製品の選定を行う。その際、その製品に適さない部分や製材工程で発生する廃材などは、別の企業に供給するといったかたちだ。こうした取り組みにより、伐採された木材は持続可能なかたちで、適材適所で活用されている。
カナダのペレット生産者は一般的に直接森林管理に携わることはないが、このような企業間連携によるプロセスの中で、製材工程の副産物や、各伐採業者が損傷木や低級材などから抽出した木質原料を購入している。その際には定評あるサプライヤーのみと取り引きし、その企業が扱う原木の出自を把握することで、購入する材料の持続可能性を確保している。
この持続可能性を科学的に裏付けているのが、前述した第三者による複数の認証だ。そこでは個別の森林管理の評価や、違法伐採や無許可伐採の有無、生物多様性の保全、炭素貯留の維持、持続可能な伐採のほか、野生生物の生息地や土壌・水源の保全、林業労働者の健康と安全の保護、先住民とそのコミュニティの法的および伝統的権利の尊重など、幅広い項目が審査される。
こうした背景のもと、カナダの木質ペレット業界は世界各国に持続可能でトレーサビリティが確保された高品質な木質ペレットの安定供給を実現している。中でも、カナダ木質ペレット協会(WPAC: WOOD PELLET ASSOCIATION OF CANADA)とその会員企業は、「厳格な森林法規制と第三者による監査に基づいた責任ある森林管理から生まれた持続可能な低炭素クリーンエネルギーを世界に供給すること」を誓約しており(持続可能性誓約)、一層の期待が寄せられる存在となっている。
WPACはカナダ全土に施設を持つ50以上の木質ペレット生産者と組合員を代表する組織であり、長年にわたって同国の森林資源を適切に活用した持続可能な木質ペレットの普及に取り組んでいる。同協会の会員企業は、生産した木質ペレットの多くをアジアを中心に輸出しており、グローバルな取引の実績も豊富だ。持続可能なバイオマス発電事業を検討する日本企業にとっても、安心できる取引先となるだろう。
輸入バイオマス燃料の調達にあたっては、輸送工程における温室効果ガス(GHG)の排出量を抑えることも重要なテーマとなる。この際、GHG排出量に大きく影響するのが、輸出港から輸入港までの航海距離だ。
ここでもカナダ産の木質ペレットには優位性がある。木質ペレット生産地域に近い西部カナダの港(プリンスルパート)から日本までの航海ルートは4600海里ほど。これは同じ北米大陸に位置するアラバマなどからの輸送と比較しても半分程度の距離となっており、GHG排出量の抑制が期待できる。
カナダでは原材料の採取時や、処理工程におけるGHG排出量を削減する工夫も積極的に行われているという。ここに輸送距離のメリットも加味され、ライフサイクルGHGを抑えるという観点でも期待できる木質バイオマス燃料となっている。
カナダ木質ペレット協会の専務理事であるゴードン・マレー氏は、日本市場に向け、「日本が再生可能エネルギーの革新において発揮しているリーダーシップ、気候変動対策に対する真摯な取り組みに心から敬意を表します。気候変動への対応には迅速かつ断固とした行動が求められており、化石燃料からの脱却と再生可能エネルギーの推進は、それを実現する上で欠かせません。
カナダのように、規制が整った国で責任を持って生産される木質ペレットは、日本をはじめとする世界各地の持続可能なエネルギーシステムの構築に大きく貢献します。
私たちは、日本のパートナーの皆さまに対し、森林管理に関する厳格な法規制と第三者機関による監査のもと、責任ある管理がなされた森林から供給される再生可能で低炭素のエネルギーを安定的にお届けすることを約束します」と述べ、木質ペレット市場はここ数年で成長していると強調する。
カナダのように法規制が整い、WPAC会員企業のような信頼できる生産者が供給する、複数の第三者認証に裏打ちされた木質ペレットであれば、今後さらに厳しさが増す日本の木質バイオマス市場にあっても持続可能性に不安を覚えることはないだろう。バイオマス発電事業の課題解決に向けて、カナダの木質ペレットが、ますます重要な選択肢になっていくことは間違いない。
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提供:カナダ木質ペレット協会
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2025年3月16日