サイバーセキュリティ対策や、今後の長期稼働を見据えた設備更新が課題となっている太陽光発電業界。ファーウェイ製品との連携を軸に、オルテナジーが展開する2つのソリューションが、こうした課題に抜本的な解決をもたらそうとしている。
再生可能エネルギーのさらなる導入拡大が求められる中、発電所のサイバーセキュリティ対策と、長期安定電源化に向けた運用体制の構築が大きな課題となっている。特に太陽光発電においては、サイバー攻撃などに備えるセキュリティ対策の問題が顕在化するとともに、パワーコンディショナー(パワコン)の更新時期に合わせてシステムの在り方を見直す動きが広がっている。
こうした状況にあって、太陽光発電関連事業を展開するオルテナジー(東京都立川市)の2つのソリューションが注目を集めている。サイバー攻撃から発電所を守る次世代遠隔監視システム「ソーラーグリッドPPH(Public Power Hub)」と、初期費用ゼロ円で最新パワコンに交換できる「パワコンまるごとサービス(通称:パワまる)」だ。
オルテナジーは2010年の設立時から太陽光発電の販売や施工を手掛け、EPC事業やO&M事業、PPA事業にも先駆的に取り組んできた企業。近年は、モニタリングやセキュリティを重視した自社開発のITソリューションを武器に、事業領域を拡張し続けている。ソーラーグリッドPPHとパワコンまるごとサービスは、いわば、その集大成とも言えるものだ。そして、その実現の背景には、ファーウェイの太陽光発電向けソリューションとの緊密な連携があるのだという。詳細を知るべく、オルテナジー代表取締役CEOの高橋眞剛氏を訪ねた(※高=はしごだか)。
「2024年5月、約800台に及ぶ太陽光発電所の遠隔監視機器がサイバー攻撃を受け、不正送金に悪用されるという事件が発生しました。これは業界関係者に大きな衝撃を与えただけでなく、“発電所のサイバーセキュリティ対策は発電事業者の社会的責務である”ということを、改めて認識させる出来事でした」と高橋氏は話す。
ソーラーグリッドPPH(Public Power Hub)は、そうした社会課題を見越して開発されたセキュリティ特化型のモニタリングシステムであり、これを導入することで、外部からの侵入が実質的に不可能になるという。モバイル通信による閉域網の活用で強固なセキュリティ環境を構築するのが大きな特徴で、ハッキングや情報漏洩(ろうえい)などのリスクから発電所を守りつつ、遠隔監視によるさまざまなデータ分析も実現できるのだ。
太陽光発電に関するサイバーセキュリティについては、経済産業省もワーキンググループを立ち上げ、実効的な対策の普及に向けた議論を進めている。ソーラーグリッドPPHは、このワーキンググループでも「電力システムのサイバーセキュリティ強化と安定運用に資する事例」として取り上げられるなど、注目を集めているソリューションだ。
高橋氏は、同ソリューションのポイントは“閉域網”にあるとして、次のように述べる。
「ソーラーグリッドPPHは、一般的なインターネット回線から切り離された、モバイル専用線を使った閉域網を採用することで、限られたユーザーのみがシステムにアクセス可能な仕組みになっています。不特定多数のユーザーがアクセスできる可能性があるインターネット回線を使わず、切り離すことで、そもそも攻撃の入り口を無くしてしまおうという考えです。モバイル専用線による通信経路についても、階層化された複雑な設計になっており、仮にサイバー攻撃を受けても、迷路構造により侵入者がシステムの中枢に辿り着くことを許しません」
通常、モバイル閉域網などを導入すると、従来利用できていたWeb UI(パワコンを制御するWebシステム)にもアクセスできなくなってしまう。そこで、ソーラーグリッドPPHでは、正規の管理者だけが使える専用のアクセス方法を用意。この部分のセキュリティも担保するために、二要素認証とタイムアウト機能を実装している。
ソーラーグリッドPPHは、こうした複数のセキュリティ対策を組み合わせることで、従来の“ファイアウォール頼み”の対策を超える、新たな安全基盤を提供しているのだ。
ソーラーグリッドPPHの魅力は、導入の手軽さにもある。強固なサイバーセキュリティ対策を実現しながら、必要となるのは専用のSIMカードのみ。ファーウェイ製のパワコンとスマートロガー(Smart Logger)があれば、スマートロガーのSIMスロットに、専用のSIMカードを挿入するだけでソーラーグリッドPPHの幅広い機能をすぐに利用できる。一般的な遠隔監視システムで必須とされる、ゲートウェイ機器などの設置が不要というのは大きな強みだ。
この専用SIMカードのみで手軽に導入できるシステムを実現するためには、パワコン側の対応も必要だった。しかし、その要望に応えてくれたパワコンメーカーは少なかったと高橋氏は振り返る。
「この仕組みを実現するためには、メーカー側にパワコンのファームウェアを書き換えてもらう必要がありました。国内外いくつかのパワコンメーカーに相談したのですが、弊社の要望に十全に対応してくれたのはファーウェイだけだったのです。おととしの夏にこの依頼を持ちかけたところ、年内にはベータ版が完成し、翌年の春には正式版がリリースされるという、そのスピード感にも驚かされました」
ファーウェイ製パワコンとの連携なら、SIMカード以外に新たな機器を追加購入する必要がないので、コストも大幅に抑えることができるという。高圧や特高はもちろんのこと、大きな予算を掛けられない小規模な低圧案件でも容易に導入できるだろう。
ソーラーグリッドPPHは、セキュリティ性能だけでなく、遠隔監視システムとしての性能も高い。パワコンとの連携により、発電状況をモニタリングできるだけでなく、エラー分類や通信異常などをもとに、発電所のステータス判定を行う機能も備えている。発電所の状態は「異常/注意/正常」の3パターンに分類され、これらの情報は発電所の一覧画面上で簡単に確認できる。さらに、各デバイスのステータスも「故障/要現場確認/要分析/経過確認」といったように細かく状態を確認できるなど、問題が発生した場合にすぐに原因を特定しやすくする機能も搭載している。
地域や稼働開始時期、施工会社、O&M事業者などの情報をブロックごとに表示する機能も備えており、複数の発電所を管理する事業者にとっても利便性が高い。その他、日射量や気温、降雪量など気象データの活用も可能。蓄電池の充放電量や蓄電残量の表示機能も用意されており、後から蓄電池を導入する場合でも安心だ。
太陽光発電が分散型エネルギーの主役として定着した今日、サイバーセキュリティ対策は避けられない大きな課題だ。ソーラーグリッドPPHのように「安全」「手軽」「高性能」という三拍子そろったモニタリングシステムは、これからの業界標準になり得るポテンシャルを秘めていると言えるだろう。
2025年から本格展開を開始した、オルテナジーのもう一つの取り組み「パワコンまるごとサービス」は、太陽光発電所の長期安定稼働を実現する新しいリパワリングソリューションだ。パワコンのレンタルと、ソーラーグリッドPPHを組み合わせた、これまでにないサブスクリプション型(月額定額制)のトータルサポートサービスとなっている。初期費用ゼロ円の月額定額制で最新のパワコンに交換が行え、さらにモニタリングやセキュリティ対策にも対応するなど、太陽光発電所の運用課題を丸ごと解決できるサービスとなっている。
高橋氏は、パワコンまるごとサービスの狙いを、こう話す。
「FIT制度開始から10年以上が経過し、パワコンの交換時期を迎えた太陽光発電所が急増しています。われわれはこの機会に、高性能な最新パワコンに交換して発電量を回復させるとともに、サイバーセキュリティ対策をしっかり講じて、今後のリスクに備えてほしいと考えています。しかし実際には、パワコンの交換費用を当初予算に組み込んでいなかった発電所も少なくなく、思うようにリパワリングが進められないというオーナー様が多くいらっしゃいます。そこで弊社は、パワコン交換のハードルを一気に下げ、同時にセキュリティ対策も実現するソリューションとして、パワコンまるごとサービスの提供を開始しました」
具体的なサービス内容は、下表の通り。なお、パワコンには、発電所の規模とニーズに応じて、最適なファーウェイ製品が用意される。そして、サービス期間(基本10年/応相談)終了後、そのパワコンは契約者に無償譲渡される仕組みだ。
上記の表にある「モニタリング」と「セキュリティ」は、パワコンまるごとサービスが内包するソーラーグリッドPPHの機能であり、この部分に別途費用が掛かることはない。また、パワコンが故障した場合は無償交換の対応となるので、メンテナンス費用が発生することもない。結果的に、O&Mコストを削減することにも役立ってくれるだろう。さらにオプションとして盗難対策や除草、パネル洗浄などにも対応しているので、文字通り発電所のメンテナンスを“まるごと”任せることができる。
パワコンまるごとサービスは、ほとんど全ての規模の事業用太陽光発電に対応している。低圧から高圧、特高まで、規模の大小は問わない。また、工場や倉庫、商業施設など、屋根設置太陽光にも対応している。FITを活用した売電型はもちろん、自家消費型発電設備でも利用が可能だ。当初はパワコンの更新ニーズに合わせて提供を開始したサービスだったが、新規の案件にも多く採用されているという。
そして、「このように幅広い案件に対応できるのも、ファーウェイのパワコンを採用しているからに他ならない」と高橋氏は話す。分散型パワコンのパイオニアとして、ファーウェイは低圧用から特高用、さらには自家消費向けまで、幅広いラインアップを有している。だからこそ、あらゆるタイプの発電設備に対応できるのだという。
加えて、高橋氏は、ファーウェイ製品の信頼性の高さを強調する。
「弊社はこれまで多くのパワコンを扱ってきましたが、ファーウェイ製品の故障率の低さは圧倒的です。万が一トラブルが生じても、迅速に交換品を届けてくれるので、発電ロスは最小限に抑えられます。また、分散型パワコンならではのシステム設計の柔軟さや、設置場所の自由度の高さは、施工するわれわれにとっても、導入するお客様にとっても大きなメリットがあると感じています」
パワコンまるごとサービスはリリースから半年と短い期間ながらも、すでに導入実績は150件を超え、年内には500件以上に達する見込みだ。オルテナジーでは現在、高まる需要に対応すべく、同サービスの展開を請け負う代理店も募集中だ。
オルテナジーでは、ソーラーグリッドPPHとパワコンまるごとサービスの提供を通じて、セキュアで長期安定的な電源インフラの拡大に貢献する考えだ。今後は、蓄電池との連携も視野に、より広範なサイバーセキュリティ対策の普及と運用効率のさらなる改善に取り組んでいく。
高橋氏は「セキュリティは単なる“防御”ではなく“信頼”の礎です」と話す。これは1社単独で成し得るものではなく、高い技術力を持ち、理念を同じくするメーカーとの連携が不可欠だという。
国内への導入が加速する中で、太陽光発電の社会的な役割と責任はこれまで以上に大きなものとなっている。それに伴い、社会を支える重要インフラとして、安定的な稼働を守るセキュリティ対策と効率的な運用を、より低コストかつ迅速に実現することが、業界全体の課題となってきた。ファーウェイとの連携により、こうした太陽光発電の課題解決を支えるオルテナジーの新ソリューションには、今後ますますの関心が寄せられることになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:華為技術日本株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2025年8月8日