水素・原子力の課題を解決――3Mが提案する新たなエネルギーソリューションとは?日本でのエネルギーインフラの普及を後押し

カーボンニュートラルの達成を目指す日本のエネルギー戦略において、今後大きな役割を担うと期待されている水素と原子力。その一方で懸念されるコストや安全性の課題に、素材(マテリアル)の革新による解決策を提案しているのがスリーエム ジャパンだ。同社が日本市場で新たな展開に注力する、3つのエネルギーソリューションとは?

PR/スマートジャパン
» 2025年09月10日 10時00分 公開
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 グローバルに脱炭素化の流れが加速している現在。2050年のカーボンニュートラル実現を掲げる日本政府は、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、水素などの次世代エネルギー開発、そして原子力発電の活用を重要政策として推進する方針を示している。

 一方で、普及において課題となるのが、コストや安全性の問題だ。水素は製造・貯蔵・輸送に関するさらなるコストの低減、原子力発電については、安全かつ長期的な視点を考慮した核燃料の新たな保管方法の構築が求められている。

 こうした今後のエネルギーに関する課題解決に、独自のマテリアルサイエンス技術で貢献する企業として存在感を高めているのが、3M(スリーエム)だ。ふせんなどの文具製品やスポンジなどの日用品でも広く知られる同社だが、そのグローバルな事業展開は、自動車、工業用品、電子部品など、幅広い産業にわたる。エネルギー分野においても、石油・ガス、風力、水素、原子力などの各分野に、独自のさまざまなソリューションを提供し続けてきた。

 3Mの日本法人であるスリーエム ジャパンでは、日本市場におけるエネルギー関連事業を強化し、エネルギーの生成から輸送、消費に至るまでのバリューチェーン全体への貢献を目指している。中でも2025年現在、特に注力しているのが水素と原子力分野だ。スリーエム ジャパン トランスポーテーション&エナジー営業本部 アジア統括営業本部長の中山圭司氏はこう話す。

 「世界的にクリーンエネルギーの普及が進む中で、再生可能エネルギーで製造するグリーン水素への期待が高まっています。また、COP28において「原子力3倍宣言」が発表されるなど、原子力の役割も再評価されはじめました。日本でも同様のトレンドが加速すると見られる中、われわれ3Mが国内の水素・原子力分野に関わる企業に貢献できる点は多いと考えています。3Mがグローバルで培った素材や技術を日本市場に合わせてカスタマイズし、用途や環境に合わせた最適解のソリューションとして提供していく方針です」

スリーエム ジャパン トランスポーテーション&エナジー営業本部 アジア統括営業本部長の中山圭司氏

 具体的には、グリーン水素製造のコスト低減に貢献する「3M ナノ構造化イリジウム触媒」、水素貯蔵システムの断熱性能向上に寄与する「3M グラスバブルズ」、核燃料の安全かつ安定的な保管を実現する「3M 金属マトリックス複合材料」、この3製品の展開に注力する方針だという。

 これらは単なる素材や部品ではなく、エネルギーインフラの根幹を支えるソリューションとなっている。以下で、それぞれの特徴を見ていこう。

グリーン水素製造の低コスト化を実現する「3M ナノ構造化イリジウム触媒」

 水素は、燃焼時に二酸化炭素を排出しない次世代のクリーンエネルギーとして注目されている。特に再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して製造される「グリーン水素」は、脱炭素社会を実現する切り札の一つとされている。そしてこのグリーン水素を生み出す製造分野のコア技術として、国内外で研究開発が加速しているのが水電解装置だ。

 現在実用化されている水電解装置には、水酸化カリウムの強アルカリ溶液を使用する「アルカリ型水電解装置」と、純水を使用する「固体高分子(PEM)型水電解装置」の2種類がある。それぞれに一長一短があり、一般に、コストや稼働時間の観点からはアルカリ型が、変動性を持つ再生可能エネルギーとの親和性や、装置のコンパクトさという点では固体高分子型が優れるとされている。

 3M ナノ構造化イリジウム触媒は、固体高分子型水電解装置に用いられ、同装置の弱点とされてきたコストや、耐久性の問題の解決に貢献するソリューションだ。同装置では水電解のためにイオン交換膜が使用されるが、この膜には触媒として希少金属のイリジウムがコーティングされている。イリジウムは、年間産出量が世界全体でも数トン規模しかないレアメタルであり、価格変動も激しいため供給リスクが高い。そのため、このイリジウムの使用量を削減するための技術に注目が集まっている。

 「イリジウムはプラチナよりも希少で、産出地も限られています。固体高分子型水電解装置のさらなる普及にあたっては、イリジウムの使用量を削減しつつ、いかに高い水素製造効率を実現するかが大きな課題となっています」(中山氏)

 3M ナノ構造化イリジウム触媒は、この課題を解決するソリューションだ。ナノ構造化イリジウム触媒とは、ナノサイズの結晶性有機樹脂にイリジウムを塗布した粉体となっている。イリジウム単独ではイオン交換膜上にそれほど薄くコーティングできないが、このようにナノサイズの有機樹脂粉体と一体にすることで、非常に細かく薄膜に配置できるというメリットがある。

「3M ナノ構造化イリジウム触媒」の特徴

 さらに、イリジウム単体で使用するより耐久性も向上し、標準動作条件下ではより高い電流密度を安定的に得ることも可能だという。こうした性能によって、希少で高価なイリジウムの使用量を大幅に減らし、グリーン水素製造の低コスト化に貢献するのが3M ナノ構造化イリジウム触媒だ。3Mの試算によると、同社のナノ構造化イリジウム触媒を採用することで、イリジウムの使用量を従来の半分から4分の1程度に削減できるという。

液化水素の輸送・貯蔵を革新する断熱材「3M グラスバブルズ」

 水素を輸送・貯蔵するには、体積を大幅に縮小できる“液化”が有力な手段となる。水素はマイナス253℃という極低温で液化され、その体積は気体の約800分の1にまで縮小する。しかし、この時タンクに収められた液体水素は、外部からの熱の影響を受けると一部が気化してしまう。この自然気化(ボイルオフ)を抑えることは、水素の利用効率に直結するため、貯蔵するタンクには高度な断熱性能が求められている。

 3M グラスバブルズはまさにこの断熱の課題を解決するソリューションであり、極低温液化水素貯蔵タンク用の断熱材として注目を集めている。同製品は化学的に安定な不溶性ガラスでつくられた、直径約数十マイクロメートルサイズの微小な中空構造を持つガラス球。これをタンクの外壁と内壁の間に充填(じゅうてん)することで、熱の侵入を大幅に抑制できる。3M グラスバブルズを用いた場合、水素のボイルオフを最大40%削減可能だという。

 また、熱サイクルに強く、断熱性能が長期にわたって落ちにくいのも特徴だ。形状は高精度な真球で、充填力に優れており、施工も容易。比重・強度・粒径分布が安定しているなど、高い品質も強みだという。

「3M グラスバブルズ」の水素貯蔵タンクでの利用イメージ

 これまで3M グラスバブルズは、軽量化ニーズが高い自動車の樹脂部品など、幅広い用途で使われてきた。一方でその断熱性能を目的とした導入も広がっており、NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発するロケットの水素燃料タンクに断熱材として採用された実績もある。

 中山氏も、「3M グラスバブルズの性能と信頼性の高さは、グローバルなさまざまな産業への導入実績からも立証されています」と話す。日本では、オーストラリアからの液化水素輸送プロジェクトや、国内港湾での水素インフラの整備が進んでおり、水素貯蔵タンク用断熱材のニーズは高まるばかりだ。新設するタンクはもちろん、既存タンクの断熱材更新、大型液化水素輸送船やタンクローリーへの活用など、3M グラスバブルズへの期待は大きい。スリーエム ジャパンでは、同製品を日本市場に最適化した形で提供していく計画だ。

核燃料の安全な保管に貢献する「3M 金属マトリックス複合材料」

 スリーエム ジャパンがクリーンエネルギー分野向けのソリューションとして、日本での展開に注力するもう一つの製品が「3M 金属マトリックス複合材料」だ。これは、アルミニウムと炭化ホウ素を組み合わせた金属素材で、炭化ホウ素の働きにより中性子を高効率に吸収できるのが特徴。使用済み核燃料などを、安全に貯蔵・輸送するための専用容器である「キャスク」の材料となるものだ。

「3M 金属マトリックス複合材料」のキャスクにおける利用イメージ

 現在、日本の原子力発電所では、運転後に取り出された核燃料を敷地内のプールに保管するのが一般的だ。しかし再処理や最終処分が進まない中で、保管容量の逼迫(ひっぱく)が深刻化しており、将来的には地上設置型のキャスクを利用した新たな貯蔵体制の構築が必要になる可能性も指摘されている。

 キャスクは厚い金属壁で放射線を遮蔽(しゃへい)すると同時に、内部の発熱を効率的に外部へ放散する必要がある。しかし、従来の鋼材や鉛、コンクリートなどの遮蔽材は、遮蔽性能と熱伝導性能の両立が難しく、長期使用時の劣化や腐食も課題とされていた。その点、3M 金属マトリックス複合材料は、高効率に中性子を吸収できる高い10B面密度を有するとともに、非常に良好な熱伝導率を誇っている。

 中山氏は「3M 金属マトリックス複合材料は、プールに入れない乾式設置タイプのキャスクの安全性や性能向上に、大きく貢献できる製品だと考えています。実際に米国や欧州、韓国などでは、この材料を利用したキャスクが、核燃料の長期保管に利用されるなど、グローバルな実績も豊富な製品です」と話す。

 同製品の採用は単なる安全対策にとどまらない。安全性に優れ、高性能なキャスクの運用が可能になれば、使用済み核燃料の保管場所の確保にも希望が見えてくる。核燃料サイクル全体の信頼性も向上し、日本の原子力エネルギー政策の実効性を高めることにもつながるだろう。

社会課題にマテリアルサイエンスで応える

 水素製造の低コスト化に寄与する「3M ナノ構造化イリジウム触媒」、液化水素の貯蔵課題を解決する「3M グラスバブルズ」、原子力分野の安全性に貢献する「3M 金属マトリックス複合材料」――これら3つのソリューションは、いずれもエネルギーインフラの根幹を支える基盤技術だ。そして、それらは日本のエネルギー市場が抱える、製造コスト、輸送・貯蔵、安全な保管といった喫緊の課題に対する具体的な解決策となっている。

 3Mは、なぜこうしたソリューションをタイムリーに提供できるのか。中山氏はその背景として、3Mが持つ「テクノロジープラットフォーム」の存在を挙げる。これは3Mが長年にわたって培ってきた、49ものコアテクノロジーからなる技術基盤だ。各コアテクノロジーは、材料・プロセス・デジタル・機能・アプリケーションに分類され、同社はそれらを自在に組み合わせることで、複雑かつ多様な課題に対し、最適な解決策を創出し続けている。

 中山氏は、こうした同社のソリューションを日本のエネルギー市場に向けて展開することについて、こう話す。

 「3Mがエネルギー分野向けに展開するソリューションは、全てが最終製品というわけではありません。しかし、エネルギーというのは複雑なシステムの組み合わせによって生み出されるものであり、その一部を弊社のソリューションで高性能にすることは、結果的に日本のエネルギーインフラ全体の効率や品質の向上に貢献できると考えています。一部を変えるだけで、システム全体の性能やコスト構造が変わり、社会の利益につながる――そういったインパクトをこれからも提供していきたいと考えています。スリーエム ジャパンでは、3Mのマテリアルサイエンスの力を通じて、日本のより安定的なエネルギーインフラの未来と、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります」

 3Mのアプローチは、常に“3Mのサイエンスを通じて、より明るい未来を実現するために必要不可欠なものを創り出す”という考えに基づいている。日本のエネルギー戦略が変化の局面を迎える中、スリーエム ジャパンは日本市場の特性に合わせた細やかな対応力と、グローバル企業としてのスケールを兼ね備えたプレイヤーとして、今後より大きな役割を果たしていくことになるだろう。

※3Mは3Mの登録商標です。

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提供:スリーエム ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2025年11月4日