改正クリーンウッド法の施行により、バイオマス燃料の合法性や持続可能性に関する説明責任は、発電事業者の重要な責務となった。そうした中、確かな透明性を備えた調達先として注目されているのがカナダ産木質ペレットだ。州単位の「地域リスク評価(RRA)」が担保する信頼の仕組みと、カスケード利用や被害木の活用といった資源循環の取り組みを通じて、その優位性を紹介する。
再生可能エネルギーの一つとして、日本の電源構成を支えてきたバイオマス発電。太陽光や風力と異なり、天候に左右されにくい電源であることから、電力の安定供給を担う存在として一定の役割を果たしてきた。
しかし近年、その燃料となる木質バイオマスの調達を巡っては、持続可能性に対する視線が世界的に一段と厳しくなっている。伐採の合法性が担保されているのか、森林資源を過剰に消費していないか、生物多様性や地域社会への影響はどうか──。再生可能エネルギーとしての価値そのものが、燃料調達の在り方によって問われる局面を迎えている。
こうした流れを受け、日本では2025年4月1日に改正クリーンウッド法が施行された。これにより、木材および木質燃料を扱う事業者には、「合法性が確認された原料を調達・使用すること」が義務付けられた。単に価格や供給量で燃料を選ぶのではなく、第三者認証などの客観的な根拠により、その来歴を説明できることが前提条件となっている。
こうした要請の中で、日本市場において存在感を高めているのがカナダ産の木質ペレットだ。カナダは世界有数の森林資源国であり、長年にわたり官民一体で持続可能な森林管理の制度整備を進めてきた。森林管理は法令に基づいて行われ、伐採可能量は科学的根拠に基づいて設定されている。伐採後の再造林や森林更新も制度として組み込まれており、森林資源の長期的な維持を前提とした取り組みが進められている。
こうした国家・州レベルの管理体制に加え、カナダの木質ペレット生産者自身も国際的な認証制度を積極的に活用し、原料調達の適正性を示してきた。その代表例が、SBP(Sustainable Biomass Program)認証の活用だ。
SBP認証は、木質バイオマス燃料を対象とする国際的な認証制度であり、2013年に英国で設立された。その燃料が合法的かつ、持続可能な供給源から調達されたものであることを保証する役割を果たしている。日本のバイオマス発電事業者にとっても、調達リスクの低減に向けた大きな判断材料となっている認証制度だ。
SBP認証において、原料供給地(サプライベース)の持続可能性リスクを評価するプロセスに、「供給基盤調査(Supply Base Evaluation = SBE)」がある。SBEでは、木質ペレット生産者が木材を買う際に、一定の規定に従って、自らその持続可能性を調査することを求めている。具体的には、8つの基準(法順守/労働者の権利/先住民・地域住民の権利/生物多様性と保護/森林の生産性と健全性/水と土壌の保全/温室効果ガス/大気への影響)を網羅する42の指標に基づいて、詳細なリスク評価を行う必要がある。
カナダでは、このSBEの信頼性をより高めるために、「地域リスク評価(Regional Risk Assessment = RRA)」を州単位で実施している。
地域リスク評価(RRA)は、カナダ産木質ペレットの持続可能性を客観的に裏付けるものでもある。通常、SBEでは個々のペレット生産者が各自で調査を担当するが、RRAでは独立した第三者機関が州単位で地域全体のリスクを調査する。つまりRRAは特定の事業者単位ではなく、地域全体を対象とした公的な評価プロセスなのだ。木質ペレット生産者は、このRRAを用いて、SBEを完了させることになる。
カナダにおけるRRAは、各州の伐採可能な森林地域を網羅し、木質ペレット生産者に対して期待される事項が正しく理解および検証されるよう、リスクの特定と管理、共有するためのプラットフォームの機能も果たしている。RRAの策定には、関連法令や政策、慣行に加え、各州の森林管理に関する実務的な知見も反映されている。各種データベースや統計資料はもちろん、州政府やステークホルダーによる報告書、専門家へのインタビューや関係者へのヒアリングなど、そこには多様な情報が生かされているという。
カナダでは既に、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州、ケベック州においてRRAが完了している。州単位でリスクが整理されることで、各生産者が個別に評価する負担が軽減されると同時に、地域全体で評価の一貫性が担保されているのだ。
カナダのRRAは、「REF(Risk Evaluation Framework)」と呼ばれる段階的アプローチに基づいて策定される。具体的には、「1.リスクを管理するための規制枠組みと監督体制があること」「2.順守を確実にする実施メカニズムがあること」「3.公開された最新の情報で現地の結果を検証できる手段があること」を確認するという仕組みだ。
評価の結果、追加的な管理やリスクの回避策が必要と判断された事項は、「特定リスク」と定義される。また木質ペレット生産者は、RRAの結果を用いて自社のSBEを完成させる際、特定されたリスクに対して効果的な「緩和措置」を講じていることを客観的に証明しなければならない。
生産者がリスクを解消できない場合、その原料はSBP準拠の調達対象としては不適格となる。最終的には、独立した第三者認証機関が、RRAを含むSBEの適切な実施と緩和措置の効果を検証することで、サプライチェーン全体の信頼性を維持する仕組みだ。
州政府による厳格な森林管理と、RRAという客観的な評価制度が組み合わさることで、カナダ産木質ペレットは、日本の改正クリーンウッド法が求める「合法性・持続可能性の説明可能性」を高いレベルで充足しているのである。
こうしたSBEやRRAを実施した上で、SBP認証を取得しているカナダの木質ペレット生産者の多くは、カナダ木質ペレット協会(WPAC)のメンバーとなっている。同協会は、会員企業による持続可能な原料調達と木質ペレットの普及を目的に、長年にわたり活動を続けてきた。現在、カナダに製造施設を有する50社以上の木質ペレット生産者が加盟する。
SBP認証の取得や維持には、制度の正確な理解と継続的な対応が求められる。同協会は、会員企業がSBEやRRAを適切に活用できるよう情報を共有するとともに、国際的な議論や政策動向を踏まえた発信にも力を入れている。
2025年には日本市場に向けた情報提供を大幅に強化するなど、多言語での透明性確保にも尽力している。同年に東京で開催された国際会議「BioInnovAsia 2025」への参画などを通じ、日本の事業者との直接的な対話も深めている。制度の裏付けだけでなく、顔の見えるパートナーとしての信頼を築こうとする姿勢が、カナダ産木質ペレットの強みにもなっている。
カナダ木質ペレット協会に参画する企業は、単に認証制度にのっとるだけではなく、森林資源を最大限に有効活用する「カスケード利用」の原則と、気候変動によって被害を受けた森林資源を再生可能な価値へと転換する先進的な実践を進めている。
カスケード利用とは、伐採された木材を可能な限り付加価値の高い用途に優先的に供給し、最終的にエネルギー用途へとつなげることで、資源効率と環境価値を最大化する考え方だ。具体的には、まず丸太を建材や家具などの長寿命製品に使うことで、炭素を長期間にわたり貯留する。加工過程で生じる端材やおがくず、樹皮などは、まずパルプや乾燥用バイオマス燃料として利用し、最終的に他に用途のない残材のみが木質ペレットの原料となる。この一連の流れにより、木質ペレットは他用途で活用された後の副産物や、残材を有効活用して生み出される再生可能エネルギーとなり、資源の無駄を極限まで抑えた循環型経済の実践例となっている。
こうしたカスケード利用は、SBPの認証を取得するための要件となっている。また、日本における改正クリーンウッド法においては、SBPの認証を利用することが認められている。つまり、SBPの認証を取得したペレットであれば、カスケード利用であることが認められると同時に、改正クリーンウッド法にも対応が可能だ。
加えて、カナダ産の木質ペレットのサプライヤーはSBPのみならず、国際的な森林管理団体であるFSCによる森林管理認証を取得している。さらにカナダ規格協会(CSA)と持続可能な森林イニシアチブ(SFI)という、PEFC森林認証制度によって認証された同国の2つの森林管理規格により、複合的に認定を受けている。つまり、独立機関による森林から最終製品に至るまで、その持続可能性を複数の認証制度によって複合的に検証し続けている。
また近年では、気候変動の影響で発生頻度が高まっている森林火災による被害木の活用にも取り組んでいる。例えばブリティッシュコロンビア州では、大規模火災跡地の被害木を対象に、森林再生と資源利用を両立するプログラムを展開している。火災によって炭化し、製材用途に適さない小径木や密集した立木を計画的に回収することで、次の火災リスクを低減すると同時に、パルプチップや木質ペレット原料として活用する。この取り組みは、野生動物の生息環境や生態系の回復を促進し、地元の雇用創出や再生可能エネルギー供給にも寄与する、いわば資源循環と地域社会の双方に利益をもたらすモデルとなっている。
このように、カナダの木質ペレット産業における資源循環の仕組みは、伐採から製材、副産物の活用、最終的なエネルギーへの転換に至るまで、一貫した価値創出を可能にしており、被害木の再生利用もその一環として統合されている。これらの取り組みは、単なる廃材の利用にとどまらず、持続可能な森林管理と低炭素社会への貢献を同時に実現するものとして評価されているのだ。
カナダ産木質ペレットが国際的に評価される背景には、制度的な透明性と多層的な管理体制が存在している。SBP認証やSBE、そしてRRAといった枠組みは、単なる規格ではなく、原料調達の合法性や持続可能性、トレーサビリティーを一貫して示すための仕組みだ。これらの制度は、カナダにおける森林管理や、業界の自律的な取り組みと密接に連動している。
日本でも2025年の改正クリーンウッド法施行を機に、バイオマス燃料の調達基準が単なる価格や供給量から、「合法性・持続可能性をいかに説明できるか」にシフトした。“安心して調達できるバイオマス燃料”として、カナダ産木質ペレットの存在感は増すばかりだ。
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提供:カナダ木質ペレット協会
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2026年4月3日