空調機器の細かい制御で、快適な環境を維持しながら消費電力量を削減:BEMS製品解説(2)
BEMSアグリゲータ幹事会社が提供するシステムの特長を解説する特集の第2回。今回は三井情報が提供するシステム「GeM2」について解説していく。同社は温度センサーの検出値を監視し、空調機器の設定温度を細かく制御することで、ピーク時に限らず、1日全体の消費電力量削減を目指している。
三井情報が提供するBEMS「GeM2」は、契約電力が50〜500kWと、BEMSアグリゲータ制度が対象とするビル全体を対象としている(図1)。最大の特徴は空調機器の設定温度を細かく制御して、快適な環境を可能な限り維持しながら、消費電力量削減を図っている点にある。
対象となる施設として同社は、店舗、量販店、映画館などを挙げている。どれも多数の来客がある施設だ。来客者がある施設では、来客にはなるべく快適な環境を提供しなければならない。そう考えると、突然空調を止めるなどの強引な制御は避けたい。そこで、三井情報は快適な環境をなるべく維持しながら、消費電力量を削減するための工夫を凝らしている。
もう1つ、ピーク時に限って節電するシステムではなく、1日中無駄を監視し、削減することで1日全体の消費電力量引き下げを狙っているという特長も挙げられる(図2)。
GeM2は、施設全体の消費電力量、空調機器の消費電力量、空調機器の設定温度、空調機器が備える温度センサーの検出値を監視する。要望があれば、空調機器が備える温度センサーを使わず、施設内に単体の温度センサーを設置し、そのデータを監視するようにもできる。
消費電力量や温度センサーの検出値といったデータは、同社が管理するデータセンターに送信する。データセンター側では、受け取ったデータを分析し、空調機器の設定温度などを制御する。
通常時は温度センサーの検出値を監視し、空調機器の設定温度に比べて温度が低くなっている部分の設定温度を高く設定することで、消費電力量を削減する。場合によっては、冷房(暖房)運転から送風に切り替える。設定温度の変更や運転モード切り替えは、空調機器を入れ替えることなく、既存の機器で対応できる。空調メーカー専用のアダプタを利用するという。
空調機器は設定温度が一定だとしても、どうしても場所によって冷やし過ぎ(暖めすぎ)な部分が生じてしまう。つまり、むらが発生するのだ。GeM2は、このむらを細かく排除して、消費電力量を抑えるシステムである。設定温度は5〜10分の間隔で見直すようになっている。
空調機器の制御は基本的に室外機1台単位となる。同社は基本的な構成として、室外機ごとに空調機器を16分割して制御する構成を提示している(図3)。16に分割した空調機器ごとに、その設置場所にある温度センサーの値に応じて運転パターンを細かく制御するのだ。
需要逼迫時の制御機能も備えている。電力会社から、供給量に対する需要が逼迫しているという知らせを受け取ったら、データセンター側から、16に分割した空調機器群のうち、任意の部分を停止させる。ただし、需要逼迫時に停止させる部分は導入前に顧客と検討を重ね、停止しても影響が少ないと判断した部分に限る。
多数の来客がある施設では、停止させても影響が少ないという部分を決められないことも考えられる。日によって、来客が集まる部分が変わるような場合は、自動的に停止させる部分を決めにくい。そのような施設では、需要逼迫時の制御はメールによる警告にとどめ、メールを受け取った管理者が、その時点の状況に応じて手動で空調などの機器を制御して消費電力量を抑えるという仕組みを選ぶことも可能だ。
自動制御と手動制御を施設の状況に応じて選択できるが、この選択によって補助金の補助率が変わるということに注意する必要がある。GeM2の場合、自動制御を受け入れると補助率は1/2となり、手動制御を選ぶと1/3になる。
GeM2をすでに導入した施設では、空調機器に掛かる電力コストを30%以上削減できたという実績がある。この実績はBEMSアグリゲータの制度が始まる前のものであり、需要逼迫時の緊急停止の機能は利用していない。需要逼迫時に限らず、1日中無駄を監視して、排除することで、快適な環境を損なわずに、ここまで電力コストを削減できるのだ。
同社は、顧客の毎月の消費電力量などのデータをまとめたレポートを携えて顧客を訪問し、空調の運用についてアドバイスするサービスも提供する。このアドバイスに応じて、分割した空調機器群の運転パターンを見直すことで、さらに消費電力量を削減できることも多いという。
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