4つの再生可能エネルギーに注力、環境省が2030年の拡大戦略:自然エネルギー
政府は9月中に公表する予定で2030年に向けたエネルギー戦略を策定中だが、それに呼応するように環境省が新たな再生可能エネルギーの拡大戦略を発表した。一般的な注目度が低い洋上風力、地熱、バイオマス、海洋エネルギーの4つに関して、具体的な方針と目標値を設定した。
2030年のエネルギー戦略で最大の焦点になっているのは、再生可能エネルギーの拡大シナリオである。原子力発電の有無にかかわらず、再生可能エネルギーの比率を現在の10%から25%以上へ拡大することが必要とされている。その実現性に関して問題点が指摘される中、環境省が新たな再生可能エネルギーの拡大戦略を打ち出した。
この戦略で注目すべきは、再生可能エネルギーの中でも今後の拡大が見込まれている太陽光、陸上風力、水力の3つを除いて、これまで注目度が低かった洋上風力、地熱、バイオマス、海洋エネルギー(波力、潮力)の4つに焦点を当てている点にある。
4つの中で最大の発電規模を期待しているのは洋上風力で、2010年度の3万kWから2030年に803万kWへ増加させる目標を設定した(図1)。そのための具体策として、これまで日本では実例の少ない「浮体式」の実証プロジェクトを2013年度に開始して、2015年度から商用プロジェクトを拡大させる計画だ。
2030年の発電規模ではバイオマスが2番目に大きくて600万kW、次いで地熱が388万kW、さらに実績のない海洋エネルギーを150万kWへ拡大することを目指す。いずれの分野においても事業化を促進するために、高効率な発電技術の開発などに取り組んでいく。
4つの再生可能エネルギーの発電規模を合計すると、2030年に1941万kWになり、2011年度における太陽光発電の市場規模である480万kWに対して4倍に相当する。しかも4つの再生可能エネルギーのいずれもが太陽光発電に比べると天候による影響が少なく、発電効率が高くなる可能性が大きい。
環境省が設定した2030年の目標を達成できるかどうか、実現性は未知数だが、あらゆる可能性を追求しながら再生可能エネルギーの拡大を図ることは国の施策として極めて重要である。今後は固定価格買取制度を運営する経済産業省との緊密な連携も求められる。
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