コンセントに挿すだけで機器を認識、次世代HEMS/BEMSの実証実験が始まる:エネルギー管理
コンセント挿し込み口ごとに電力消費量を計測する「スマートタップ」を利用して、挿し込み口につながった機器を自動認識するシステムが完成し、実証実験が始まった。電力消費量データを長期間にわたって保存し、ワークスタイルやライフスタイルを分析することなども目指している。
東京大学、大塚商会、リコーは、スマートタップを利用して、電気機器の消費電力量を収集する実証実験を東京大学本郷キャンパス内工学部2号館で始める。この実験の成果は次世代のHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)やBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の開発に役立つものとなりそうだ。
実験では2種類のスマートタップを使う。1つ目はオランダのプラグワイズ社が開発した「Sting」。日本では大塚商会が販売している。Stingは小規模オフィスや一般家庭を想定した環境に導入し、機器の電力消費量計測に利用する。
もう1つはリコーと内藤電誠町田製作所が共同で試作したもの。オフィスやビルなど、大規模な施設を想定した実験に使う。ラックに設置したサーバ群の消費電力量を計測する(図1)。
Stingは本来Zigbeeという通信方式でデータを送信する。リコーと内藤電誠町田製作所が共同で試作したスマートタップはUHF帯無線で通信する。そこで、それぞれのスマートタップの通信先に通信方式を変えるゲートウェイを設置し、どちらもIEEE1888による通信に変換する(図2)。IEEE1888はスマートグリッド、スマートビル向けの通信方式で、実証実験の現場となる工学部2号館にはIEEE1888のネットワークができている。
計測した消費電力量データは、IEEE1888のネットワーク上にある共用データベースに送信する。データベースに蓄積したデータを解析し、機器の電力消費パターンを識別することで、スマートタップにつながった機器の種類を自動的に認識する。
現在入手できるスマートタップでは、挿し込み口につながった機器を識別することは難しい。挿し込み口につながっている機器は、システム導入時に手動で設定するしかない。今回実証実験を実施するシステムが実用のものになれば、HEMSやBEMSがかなり使いやすいものになるだろう。
データベースにはスマートタップからのデータに限らず、空調機器や照明機器のデータも入っている。今後は、このデータを活用してオフィスにおける業務効率や、快適さを維持しながら電力を有効活用する方法の追求、人間のワークスタイルやライフスタイルの分析、電気機器の制御などの研究を続けるとしている。
関連記事
- 電力見える化システムのよく効く使い方 前編 「節電の基本戦略を練る」
前編では、電力の見える化システムの基本的かつ効果的な利用法を解説する - 電力見える化システムのよく効く使い方 後編 「データを集めてさらに節電」
見える化システムを使って初めて大きな無駄を見付けたという例などを取り上げて解説する - 3000円で気になる機器の消費電力を把握、電気料金なども表示する電力センサー
簡単に使えて安価な電力センサー - 電力の見える化で攻めの節電対策を
継続的な節電対策を可能にする「電力の見える化」の実現方法を紹介する
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.