木材加工で発生した木くずで発電、燃料は運搬せずその場で消費:自然エネルギー
広島県に本社を置く木材加工業者である中国木材は、木材加工時に発生する木くずなどを燃焼させて発電するバイオマス発電設備を建設する。発電した電力は電力会社に売電し、発電時に発生する熱で蒸気を作り、木材の乾燥に利用する計画だ。
木材産業界では日本一の発電能力
中国木材はもともと、国内の生産拠点4カ所中の3カ所に木質バイオマス発電設備を保有している(図1)。木質バイオマスで発電するだけでなく、発電時に発生する熱で水蒸気を作り、木材の乾燥に利用するなど、木質バイオマスをフル活用する体制を敷いている。材木の原木は副産物も合わせて残さず活用すべきという中国木材の考えを反映している。
木材加工工場内に木質バイオマス発電設備を設置する理由はもう1つある。木質バイオマス原料は燃焼時の熱量が少ない割にはかさばり、輸送に手間がかかるからだ。トラックに載せて石油を消費しながら運搬することはエネルギーの無駄遣いになる。その結果、木材加工の副産物は発生した場所で処理すべきという考えに至った。現在、中国木材は日本の木材産業界で最大の発電能力を持っている。
木質バイオマスは形も性質もさまざま
今回の建設計画は、本社工場の発電能力拡大などを狙ったものだ。現在、本社工場にある木質バイオマス発電設備の発電能力は最大で5.3MW。新設する設備の発電能力は18MWと従来の設備の3倍以上の発電能力を備えたものになる予定だ。
木質バイオマス発電設備の新設を請け負ったタクマによると、工場から発生する木くずは形状がさまざまであり、原木の種類が異なれば、廃材の性質も異なる。さらに、新設する木質バイオマス発電設備では山林に放置状態になっている未利用材も燃料とする予定だ。ひと口に木質バイオマスと言っても、形も性質もさまざまであり、燃えやすいものもあれば、燃えにくいものもあるということだ。
木質バイオマス燃料の形や性質が一定でないということが問題になっている例もあるという。国内ですでに稼働している木質バイオマス発電設備では、燃料を確保するために建設時には想定していなかった種類の木を燃料として使わざるを得なくなっていることが多い。その結果想定通りに燃焼できず、発電能力が低下しているのだ。
階段状の炉で時間をかけてすべてを燃やす
タクマは、多種多様な木質バイオマスを問題なく燃焼させるために「ストーカ炉」を利用した設備を建設することを明らかにしている。タクマが製造しているストーカ炉は、図2のように階段のような形をしている。階段状になっている部分の下から加熱した空気を送り込み、図2左側にある始動用バーナーで添加すると燃焼が始まる。
燃料となる木材が階段を少しずつ降りていく過程で加熱して時間をかけてすべてを燃焼させる。階段のように見える部分は、前後に動作する段と固定状態の段を交互に重ねてあり、前後に動作する段の動きによって燃料が移動していく。段の動きによって燃料を撹拌し、燃焼を促進させる効果もある。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、木質バイオマスを燃料とした発電設備の建設が本格的に動きつつあるが、燃料である木質バイオマスが発生した場所ですぐに処理してしまおうという計画は珍しい。確かに燃料となる端材や木くず、間伐材はかさばり、運搬には手間もエネルギーも必要だ。運搬しやすいようにチップ加工する例もあるが、チップ加工するだけでもエネルギーを消費する。今後、同じような計画を立てる業者が現れてもおかしくないだろう。
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