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有機系の太陽電池はなぜ必要――軽量でフレキシブルな性質が生きるから自然エネルギー(1/2 ページ)

有機系太陽電池はシリコン太陽電池にはない性質がある。変換効率では劣るものの、軽量でフレキシブルであるため、シリコン太陽電池の設置に向かない用途を開拓できる。NEDOの支援により、国内メーカー7社の実証試験が始まる。

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 色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池は、屋根置き用途やメガソーラーで使われるシリコン太陽電池とは違う。そもそもシリコン(Si)を使わない有機系の太陽電池だ。

 シリコン太陽電池が大規模に量産されて価格も下がる中、なぜ有機系の太陽電池が必要なのだろうか。それはシリコン太陽電池にも限界があるからだ。有機系太陽電池モジュールの変換効率は2020年時点でも10%にとどまり、20%に達するシリコン太陽電池の方が2倍優れるという想定だ。しかし、量産時の価格や軽量化、特に軽量化やフレキシブル性では有機系に分がある(図1)。


図1 有機系太陽電池の特徴。出典:NEDO

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は有機系太陽電池の弱点である発電量や耐久性を検証するため、昨年2012年7月から、2015年3月まで、総事業費45億円(うちNEDO助成分は30億円)を投じた「有機系太陽電池実用化先導技術開発」を実施。5つの助成先が選ばれた。2013年7月にはそのうち3つの助成先が実証試験の段階に入った*1)

*1) フレキシブルな色素増感太陽電池を用いる日立造船の「プラスチック基板DSC発電システムの開発」プロジェクトと、フレキシブルな光ディスク型の色素増感太陽電池を利用する太陽誘電、ビフレステックの「プラスチック色素増感太陽電池の実用性検証」が今後、実証試験に入る。

他の部品と組み合わせた多機能太陽電池を試す

 2つの助成先、日本写真印刷の「色素増感太陽電池の市場創出開発」と、シャープ、フジクラの「色素増感太陽電池モジュールの実証評価」は、いずれも色素増感太陽電池を試す。

 色素増感太陽電池は、「二酸化チタン」と「ヨウ素」、「色素」という3つの主な材料からなる。光が当たるとちょうどカラー写真フィルムと似たような反応が起き、発電する。カラー写真フィルムと違うのは、「感光」して終わるのではなく、連続的に発電することだ。色素の種類を変えることで、太陽電池に色味を持たせることができる他、透明導電酸化物(TCO)電極を使うことで、太陽電池自体をある程度透明にできる特徴がある。

 日本写真印刷は2つのプロジェクトで実証試験を進める。1つ目は絵柄をデザインした色素増感太陽電池「EneLEAF」と蓄電池・LEDライトを組み合わせ、発電量や耐久性を検証するというものだ(図2)。「デザインソーラーランタン」と呼ぶ。


図2 日本写真印刷の蓄電池・LED一体型太陽電池「デザインソーラーランタン」。赤系色素と緑系色素を使っている。出典:NEDO、日本写真印刷

 色素増感太陽電池の透明化しやすいという特性をうまく使い、日中は太陽電池として動き、蓄電池に電力を貯え、夜間は太陽電池の裏側からLEDライトで足元を照らし出すという機器だ。図2でも分かるように色素増感太陽電池は色素で絵を描くこともできる。京都市左京区にある京都市国際交流会館に42台、同京都市美術館に24台を設置した。

 配置したデザインソーラーランタンのうち、約半分に発電量などのデータを収集する配線を引き、実証試験を進める。

 日本写真印刷のもう1つのプロジェクトは「独立電源型広告掲示板」(図3)。EneLEAFと蓄電池・LEDライトを組み合わせ、共同研究を進める島根県産業技術センターとともに発電量や耐久性を検証する。含まれている機器はデザインソーラーランタンとよく似ているが、用途に合わせて組み合わせ方が全く異なっている。こちらの機器は松江市のテクノアークしまねに2台と、同くにびきメッセに4台を設置した。

 図3にあるように、昼間(図左)には下半分に配置した色素増感太陽電池で発電し、夜間(図右)では上半分に配置した掲示物をLEDで点灯する。EneLEAFには緑系の色素と赤系の色素を使った。


図3 日本写真印刷の独立電源型広告掲示板。出典:日本写真印刷
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