直流給電を利用しやすく、NTTとHPが共同で380Vのシステムを提供:蓄電・発電機器
交流と直流の変換回数を少なくすることで、電力損失を引き下げ、システムの信頼性を高められる高圧直流給電(HVDC)。しかし、対応するサーバが少ないなど、必ずしも採用が拡大していない。NTTファシリティーズと日本ヒューレット・パッカードは共同で対応製品を提供、10%程度の普及率を目指す。
大量に電力を消費するサーバルームやデータセンター。さまざまな手法で消費電力量を引き下げる試みが続いていている。
改善点の1つがサーバへの給電だ。サーバへの給電が電力ロスにつながる理由は2つある。1つは、系統から交流で取り入れた電力を何度も変換し、サーバに直流で給電していること。変換ロスが無視できない量に達する。もう1つは無停電源装置(UPS)の効率が低いことだ。そこで、変換ロスの少ない直流給電の採用とUPSまわりの効率改善に向けた動きが進んでいる。
NTTファシリティーズと日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は共同で2013年8月から高圧直流給電(HVDC)向けのソリューションの提供を始めた。直流給電の課題は、技術開発よりも関連機器が必ずしもそろっていないという問題意識があるからだ。「UPSを採用したシステムの10%程度をHVDCに置き換えたい」(NTTファシリティーズ)。
日本HPが2013年8月に販売を開始した「HP 1200W CS 380VDCパワーサプライ」がHVDCシステムとサーバを取り持つことで実現する。「HP ProLiant DL380p Gen8サーバー」「同SL230s Gen8サーバー」など4種類のサーバが対応している。日本HPは今後、データセンター向けx86サーバのラインアップのうち、約60%をHVDC対応モデルにする計画だ。
20%の電力削減、40%の面積削減
NTTファシリティーズのHVDCシステムと、日本HPのHVDC対応サーバを組み合わせることで、導入以前と比較して20%の電力削減が可能だという。加えて電源を中心とした設置スペースの40%削減が実現できる。
20%の電力削減が可能になった理由は3つある。サーバに達する以前の交流と直流の変換段数が減ったこと、サーバラック付近での変換段数が減ったこと、旧型のUPSを変換効率90%台の新型に交換できることだ。
40%の設置スペース削減を可能にした理由は2つ。変換段数が減り変換モジュールを小型化できたことと、バイパス専用盤が不要になったことだ。従来の交流無停電電源装置は内部にUPSを抱え、UPSの前後に交流直流変換、直流交流変換が必要な複雑なシステムだ。内部の変換装置(インバータ)が故障すると、サーバへの給電が止まる。これを避けるために、直接、系統の交流電流を引き込む給電線が用意されていた。これをバイパス専用盤と呼んでいる。つまり、HVDC化することで、システム全体の信頼性も高まることになる。
外部からサーバへの電力の流れは次の通りだ(図1)。図1左上が従来の構成、中央が今回の構成を表す。
まず系統から6600Vの交流がサーバを設置したビルに入り、ビル内で200Vの交流に変換。HVDCシステムは200Vを受けて、380Vの直流を出力、380Vを受けた日本HPのパワーサプライがx86サーバに対して12V以下の低圧の直流を送る。UPSをHVDCシステム内に置くことで、UPSの前後に必要だった交流直流変換を不要にしている。
関連記事
- サーバへの給電は380V直流へ、三菱電機がHVDCシステムを発売
200Vの交流を受け、380Vの直流を出力 - 電力を食い過ぎるサーバ、NTTデータが直流とクラウドで解決
HVDC部分だけで10〜20%の電力を削減 - ラックマウントサーバ向け直流給電システム、IBMのサーバと合わせて提供
ラックに搭載する各サーバから電源を取り払う - 太陽光発電パネルの電力を直流で流して損失を最小限に、データセンターで検証開始
HVDCコンテナの天井に太陽電池を配置 - 交流から直流へ変えると8%も効率が上がる、2025年には2.3GWが直流に
世界の直流送配電の容量
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.