風車の修理から1年3カ月で落下、メーカーの設計に従わず主軸が破断:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
北海道の北西部にある苫前町で、9月5日(木)の早朝に1基の大型風車が落下した。1999年に運転を開始した20基の風力発電設備の1つだが、当時は強風も吹いていなかった。調査の結果、2012年に風車の主軸を修理した際に、メーカーの設計と違う構造で設置していたことが判明した。
メーカーの設計と違う仕様で修理
落下した11号機は2012年3月に実施した点検で、主軸の軸受部分に欠損が見つかったため、修理した経緯があった。さらに複雑なことに、修理後に設置した主軸と軸受は別の7号機で使われていたものだった。7号機の主軸と軸受も著しく損傷していて、修理を実施したメーカーでは旋盤を使って主軸を20ミリメートルほど削っていた。直径が足りなくなった分は厚さ10ミリメートル程度のスリーブをはめこんで調整した(図4)。
もうひとつ修理の前後で違いがあったのは、主軸を軸受に取り付ける部分の丸みである。風車を設計したシーメンスウインドパワー社の仕様では、半径10ミリメートルの曲線(R10)で溝を入れることになっている。ところが修理時に主軸を削った後に溝を付けないまま接合してしまった。
この結果、風車が稼働している間に接合部分に過度な力がかかる状態になり、短期間で疲労による亀裂が生じてしまったと考えられている。修理後に運転を再開したのは2012年6月で、事故が発生するまでのわずか1年3カ月のあいだに疲労亀裂が発生したことになる。
1カ月前の定期点検では見つからず
ユーラス社は10月4日に公表した中間報告書の中で、2012年に実施した「主軸の不適切な修理」が事故の主因である可能性が極めて高いと記載した。ただし修理して運転を再開した後には、2012年11月に定期点検を実施したほか、事故の約1カ月前の7月26日にも巡視による点検で異常は見つかっていなかった。
そうなると、元の7号機で使われていた時から主軸に亀裂が入っていて、修理時に発見できないまま運転を再開していた可能性も残る。なぜ11号機の主軸を修理せずに7号機の主軸を再利用したのかについては明らかにしていない。
ユーラス社は引き続き主軸の破断面を顕微鏡で確認する方法などにより、事故の原因を確定して、11月上旬までに最終報告書としてまとめる予定だ。並行して同型機(国内に25機)の非破壊検査を進める一方、部品補修時の基準策定を含めた再発防止策を最終報告書に盛り込むことにしている。
最終報告書に関する続報:「修理時のミスと断定も検査結果に不安残る」
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