30億円かけて木質バイオマス発電、年間6万トンの未利用材を燃料に:自然エネルギー
茨城県の北部にある常陸太田市に、発電能力が5.8MW(メガワット)の木質バイオマス発電設備を建設することが決まった。日立造船が地元の素材生産業者から年間6万トンの木質チップを購入して20年間にわたる発電事業を実施する。総事業費は約30億円を見込んでいる。
太平洋の沿岸で風力発電が盛んな茨城県だが、北部の山岳地帯には森林が広がっていて、木質バイオマスが大量に存在する(図1)。県内で2番目に発電量の可能性が大きい常陸太田(ひたちおおた)市で、新たに木質バイオマスを利用した発電設備の建設が始まる。エネルギー事業を拡大中の日立造船が県内の生産業者と連携して実施するもので、2015年3月に発電を開始する計画だ。
固定価格買取制度の適用を受けられる20年間にわたって、約30億円の事業費をかけて推進する。発電設備の規模は5.8MW(メガワット)になり、年間で6万トンの木質チップを燃料に活用する予定である。
設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を木質バイオマスの標準である80%と想定すると、年間の発電量は約4000万kWhになる。未利用木材による電力の買取価格は1kWhあたり32円に設定されていることから、年間の売電収入は13億円程度になる見込みだ。
茨城県内では住宅建築用の木材を大量に生産していて、製材に適さない部分の有効利用が課題になっていた。日立造船は地元の生産業者と木質バイオマス燃料の安定供給を検討するための協議会を設立して、20年間にわたる燃料の確保にこぎつけた。
日立造船は事業構造の転換を図るために、再生可能エネルギーとガス火力発電を中心にエネルギー事業の拡大を進めている。
2013年9月には広島県の因島工場に隣接する遊休地にメガソーラーを稼働させたほか、茨城県の茨城工場では石油火力発電設備を最先端のガスコンバインドサイクル方式に更新して出力を引き上げる計画がある(図2)。
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