大型船にも役立つ太陽電池、CO2排出量を25%削減:自然エネルギー(2/2 ページ)
川崎汽船は二酸化炭素や排気ガスの清浄化に役立つ多数の技術を大型の船舶に盛り込む。7500台の自動車を一度に輸送できる「フラグシップ」に太陽電池や最新型のエンジンを組み込むことで実現する。環境対応技術に投じる費用は船価の1割にも達する。
国際規制に先駆ける汚染物質対策
窒素酸化物や硫黄酸化物は酸性雨や光化学スモッグにつながる物質だ。このため、国際的な削減目標が決まっている。
窒素酸化物については、現在2次規制が適用されている段階だ*1)。「フラグシップでは1次規制と比較して窒素酸化物を80%削減できる見込みだ。この削減率は2016年以降の新造船に適用される3次規制に相当するものであり、先行して達成することになる」(川崎汽船)。
川崎重工業が開発した「K-EKOS T2」と同T3を採用することで実現する(図2)。K-EKOSは二酸化炭素と窒素酸化物の排出量を同時に削減できるシステムだ。K-EKOS T2は二酸化炭素排出量を下げ、燃料の利用効率を高める過給機カット*2)と、窒素酸化物の排出量を減らす水エマルジョン燃料*3)を組み合わせたもの。T3はT2に対し、排気再循環*3)を加えることでさらに2つの物質の排出量を減らすことができる。
*1) 国際海事機構(IMO)が、国際航海用の船舶から排出される窒素酸化物と硫黄酸化物の量を規制している。
*2) 過給機とは内燃機関の吸入する空気の圧力を大気圧よりも高める装置。スーパーチャージャーとも呼ばれる。過給機をカットすることでディーゼル主機の効率が高まる。
*3) 水エマルジョン燃料では燃料中に微細な水滴が分散している。水滴が蒸発して熱を奪うことでシリンダー内の燃焼温度を下げ、窒素酸化物の生成を抑制する。排気再循環の目的もシリンダー内の燃焼温度を下げることだ。
硫黄酸化物に対しては三菱重工業と三菱化工機が共同開発した船舶用大型排気ガス浄化装置(スクラバー)を搭載することで対応する*4)。
*4) 採用するスクラバーには2つの動作モードがある。清水循環洗浄方式を採った場合は、含有硫黄分3.5%の通常燃料を使用した場合でも、同0.1%の低硫黄燃料相当の硫黄酸化物排出量を達成できる。海水洗浄方式を採った場合は、通常燃料を使用したとき、同0.5%の低硫黄燃料相当になるという。0.1%は2015年以降に排出規制海域(ECA)で求められる水準であり、0.5%は2020年または2025年に全海域で義務化が予定されている水準だという。
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