小水力発電の決め手は「水車」:キーワード解説
再生可能エネルギーを利用した発電設備の中で、バリエーションが最も多いのは水力だ。水のエネルギーを効率よく電力に変換するためには「水車」の構造に工夫が必要で、代表的なタイプが10種類ある。特に小水力発電の場合には、少ない水量と低い落差でも発電量を増やせる水車を選ぶ。
水力発電の仕組みは単純だ。水の流れで水車を回転させて、その回転で発電機が動く。いかに水流を生かして効率よく水車を回転させるかで発電量が決まる。そのためにさまざまな構造の水車が開発されている。
まず水のエネルギーを水車に伝える方式によって2つに分かれる(図1)。1つは「衝動水車」と呼ぶ方式で、水流を集めてノズルから噴射することによって、その衝撃力で水車を回転させる。もう1つは「反動水車」で、水流が水車の羽根に当たって向きを変える時の水圧で回転させる方式だ。前者は水流の速度を生かし、後者は圧力を生かす。
水量が少ない場合には衝動水車、多い場合には反動水車が適している。それぞれ水車の羽根の形や向き、水流の取り入れ方、水量を調整するための「ニードル」や「ガイドベーン」と呼ばれる部品の位置などによってタイプが分かれる(図2)。さらに水車の回転軸が縦軸と横軸のものがある。
大規模な水力発電所の多くは、反動水車で構造が単純な「フランシス水車」(図2の左下)を利用している。これに対して小水力発電では、衝動水車のうち低い落差でも効率よく回転する「クロスフロー水車」(図2の中央上)を使うケースが増えてきた。水車の中を水が交差して流れることが特徴で、特に落差が小さい場合には縦軸のタイプが有効である(図3の左)。
このほかに落差が非常に小さい場合には、水の重さで回転する「重力水車」を使うこともある。古くから農村の小川で見られるような、垂直に回転する木の水車は重力式の1種だ。最近では小水力発電用に、水をらせん状に流す構造で発電量を高めた重力水車も開発されている(図3の右)。
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