鉄道総研が狙う超電導、太陽光に生かす:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
大電力を蓄えるさまざまな装置が実用化されている。揚水発電所は最も規模が大きい。NAS電池や大容量リチウムイオン蓄電池もある。電力の取り出し時間が短いキャパシタ技術も使われている。鉄道総合技術研究所は、古河電気工業などと共同で、大電力を低損失で蓄電可能な超電導フライホイール蓄電システムを開発中だ。
マグネット部分をどう作ったか
今回のシステムの開発の課題は、超電導マグネットにあった。超電導を利用して磁力を発生させる場合、幾つかの問題がある。最も基本的なことは、超電導を起こす温度をなるべく高く保ちながら、強い磁力に耐えられる材料を開発、製造することだ。液体ヘリウム温度(−269度、4K)が必要な材料では冷却コストが高くつきすぎる。超電導状態は強い磁場で破壊されてしまうが、自ら作り出す磁場で破壊されてしまっては意味がない。そこで古河電気工業の子会社である米Super Power*3)が製造した第2世代高温超電導線材を使った。
*3) 古河電気工業は2012年2月にSuper PowerをオランダPhilips Groupから買収している。
超電導線材には2種類の有力な材料がある。1つは開発が進んでいるビスマス系の線材、もう1つが遅れて開発が始まったイットリウム系だ。今回はイットリウム系を利用した。イットリウム系は強い磁場でも超電導状態を失わないという性質がある(関連記事)。液体窒素温度(77K、−196度)で超電導状態になるものの、磁気的な性能を高めるため、冷却温度は50K(−223度)とした。第1世代高温超電導線材では20K(−253度)まで冷やす必要があったため、冷却面の改善も進んでいる*4)。
*4) フライホイール部分は常温でよい。冷却に必要な電力を少なくするため、システムの最下部にある超電導軸受部分だけを低温に保つ構造を採った。小型冷凍機を使い、軸受の周囲空間だけを熱伝導で冷やす。
今回の開発成果は超電導マグネット用の線材が用意できた段階から始まっている。超電導用マグネットは運用時に大電流が流れるため、強い磁場によって、自らを変形させる力が加わる。中部電力が開発したよろいコイル構造を採用することで従来の2倍の変形力に耐えられるようになったという。
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