温泉発電が兵庫県で始まる、70度以上の温泉水を入浴前に利用:自然エネルギー
兵庫県で初めての温泉水を使ったバイナリー発電設備が運転を開始した。地元の自治体が日帰り温泉施設に導入したもので、入浴に利用する前の70度以上の温泉水で発電する。蓄電池を併設して災害時にも施設内に電力を供給することができ、避難所としての機能向上に役立てる。
兵庫県の「新温泉町」は日本海に面した人口1万7000人の町で、名前が示すように町内には温泉地区が広がっている。その中で最も古い西暦848年から始まる「湯村温泉」で4月10日に発電設備が稼働した。温度が100度以下の温泉水でも発電できるバイナリー方式を利用する(図1)。
この一帯は温泉が豊富に出る一方、冬には大量の雪が降る豪雪地帯でもある。発電設備を導入した日帰り温泉施設の「薬師湯」は、災害時に高齢者や障害者などが避難できる「福祉避難所」に指定されている。そのために発電設備と合わせて蓄電池を併設して、停電になっても施設内に電力を供給できるようにした。
発電設備は出力20kWのバイナリー装置2台で構成する。合計40kWの発電能力があるが、実際には湯量や季節によって出力が11〜20kWの範囲で変動する見込みだ。年間の発電量は9万kWhを想定していて、一般家庭で25世帯分の電力使用量に相当する。
温泉水は源泉から引き込んだ70〜100度の状態になっている。その熱を使ってバイナリー発電装置の中にある沸点の低い媒体を熱して蒸気を発生させる仕組みだ(図2)。蒸気でタービンを回して発電した後に、媒体を冷却して液体に戻す。と同時に、発電に利用した温泉水は50度くらいに温度が下がって入浴に適した状態になる。
発電設備の建設・工事には合計8274万円の事業費がかかった。このうち8000万円を環境省の「グリーンニューディール基金」でカバーできたため、自治体の負担額は274万円で済んだ。今後は県内の工場などでも排熱を利用した発電プロジェクトを検討していて、湯村温泉のバイナリー発電設備の導入ノウハウを生かしていく。
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