「燃料0」で世界一周、ボーイング747より大きな?飛行機:自然エネルギー(3/3 ページ)
Solar Impulseは太陽電池とリチウムイオン蓄電池だけで飛行する航空機。乗員の健康が許す限り、いつまでも飛行できる「永久飛行機」だ。第1世代の機体は世界記録を8つも持っている。2013年5月に第2世代の試験飛行を始め、2015年3月からは初の世界一周飛行を試みる。
誰がチャレンジするのか
Solar Impulseという企業を設立したのは、2人の人物だ。スイスの医師で冒険家のベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard )氏が、エンジニアで企業家のアンドレ・ボルシュベルグ(André Borschberg)氏の助力を得た。現在80人の技術者を抱えている。
Solar Impulse 2の飛行高度は8500mに達する*2)。軽量化と電力の節約のため、与圧はない。酸素マスクを使う。外気温は−40度まで下がるが暖房はない。断熱材でしのぐ。
体積3.8m3のコックピットに座って5日間連続で飛行しないと太平洋を横断することができない(図6、図7)。これは海面高度で時速90km、最高高度(8500m)で時速140kmという速度のためだ。機体自体には飛行距離の限界がないのだが、パイロットが参ってしまう。そこで、世界一周飛行では最大1週間ごとにパイロットを交代して飛行する計画だ。
*2) 大気の乱れと強風を避けるため、日中は高度8500mを飛行、夜間は電力を節約するため高度を1500mまで落として飛ぶ。
ベルトラン・ピカール氏は1958年にスイスで生まれた。医師でありながら無動力の飛行に取り付かれ、Solar Impulse計画が始まる以前の1999年、気球による初の無着陸世界一周飛行を達成している。飛行期間は20日足らずだ。このような経歴は、彼の祖父や父のものと似ている(図8)。
祖父のオーギュスト・ピカールは水素気球を設計し、成層圏(高度1万6000m)に初めて到達した人物。戦後は海洋探査にも乗り出した。「バチスカーフ」と呼ばれる自立潜航が可能な電気式の潜水艇を発明し、4000mまで潜航している。ベルトラン氏の父であるジャック・ピカールと、米海軍のドン・ウォルシュ太尉は2号機のトリエステ号に乗り込み、1960年、世界で最も深い海底に到達した。マリアナ海溝のチャレンジャー海淵(水深1万911m)である。
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