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海洋エネルギー:潮・波・海水でも発電、2050年には2200万世帯分にも再生可能エネルギーの未来予測(7)(2/3 ページ)

現在のところ実現性は未知数ながら、将来に大きな可能性を秘めているのが海洋エネルギーだ。発電に利用できる主なものは潮流・波力・温度差の3種類。すべての導入可能量を合わせると一般家庭で2200万世帯分の電力になる。最大の課題は発電コストで、20円台まで下がれば普及に弾みがつく。

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最も有望なのは海洋温度差発電

 国内の海洋エネルギーの導入可能量を予測したデータとしては、OEA-J(海洋エネルギー資源利用推進機構)が2008年に発表したものがある。それによると、2050年までに潮流と波力が年間に200億kWhずつ、海洋温度差発電は2倍の400億kWhの発電量になる(図4)。


図4 国内における海洋エネルギーの導入ロードマップ。出典:NEDO(海洋エネルギー資源利用推進機構の資料をもとに作成)

 3つを合わせると800億kWhになり、一般家庭で2200万世帯分の電力に相当する。OEA-Jの予測は発電設備の規模と設置数を仮定して算出したもので、最も有望な海洋温度差発電は2050年までに50〜100MW級の設備が100カ所以上に拡大することを見込んでいる。

 発電効率を表す設備利用率(発電能力に対する年間の発電量)の点では、潮流が洋上風力と同等の30%、波力が海岸からの距離によって25〜40%に対して、海洋温度差は56%と最も高い。発電方式が地熱と同様の仕組みで、しかも海洋深層水を使って年間を通して安定して発電できることが効率の良さをもたらす。

適した海域が太平洋側に広がる

 海洋温度差発電を実施するためには、海面に近い表層水と海中にある深層水の温度差が20度以上になることが望ましい。その条件を満たす海域は日本の周辺では太平洋側に広く分布している(図5)。発電設備を陸上の海岸か、陸地に近い洋上に設置することを考えると、やはり沖縄や南九州の島が適している。


図5 海洋温度差発電のポテンシャル分布。出典:NEDO

 潮流発電になると、日本の近くでは候補地が特定の海域に限られる。潮の流れが速い場所は陸地にはさまれた海峡に多い(図6)。特に本州と四国・九州に囲まれた瀬戸内海に十分な潮流エネルギーが存在するほか、九州西部の長崎県の半島や離島の周辺にも有望な海域が見られる。


図6 潮流エネルギーのポテンシャル分布。出典:NEDO

 残る波力発電に関しては、日本近海のエネルギーの分布状況を解析したデータはなく、今後の調査が待たれるところだ。

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