ビルの外装で太陽光発電、換気システムが真夏の日射熱を1割削減:スマートオフィス
大林組はビルの外装に使うカーテンウォールに太陽電池を一体化して、新しい実験施設に搭載した。発電した電力を使って、窓に設置した換気システムを動かすことができ、真夏の日射熱を最大で1割削減することができる。「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」に向けた取り組みの1つである。
大林組が開発した「太陽光発電外装システム」は、合わせガラスによるシリコン結晶系の太陽電池を採用している。東京都内の技術研究所に建設した新しい実験施設「オープンラボ-2」の外装に導入した(図1)。
太陽電池は外装カーテンウォールの枠組みの中に庇(ひさし)状に装着することで、視界を妨げず、夏には日よけの効果もある。さらに窓枠にはロールスクリーンと換気システムが設置されていて、太陽光発電の電力で稼働する仕組みだ。
この換気システムは夏の強い日射によって暖められた窓周辺の空気を屋外に排出して、日射熱を最大で1割削減して冷房効果を高めることができる。冬には換気口をすべて閉じて外気を遮断する一方、春や秋には外気を取り込んで換気する。
太陽光発電による電力を換気システムやロールスクリーンに供給するために、独自の制御システムも開発した(図2)。制御盤を使って電力を蓄電池に充電しながら、直流を交流に変換してから換気システムなどに供給することができる。電力会社の送配電網に接続しないオフグリッド方式にすることで、BCP(事業継続計画)対策として非常時の電力供給手段に利用することも可能である。
大林組を含めて建設大手各社は、ビルの消費エネルギーを実質的にゼロ以下にする「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の開発に力を入れている。ZEBを実現するためには、断熱対策や省エネ機器の導入に加えて、太陽光や地中熱などの自然エネルギーを効果的に取り入れる必要がある。大林組は今後オフィスビルや商業施設に太陽光発電外装システムを提案してZEBを推進していく方針だ。
関連記事
- 目指すは全てが「0」の世界、未来の建物が実現
大林組がゼロエネルギービルをさらに進化 - 建物の「窓」で発電、有機系太陽電池を外装材に使う
竹中工務店が窓のルーバーに設置して実証実験 - 消費エネルギーがゼロのビルを実現、壁面に付く2.9kgの軽量太陽電池
三井住友建設が技術開発センターに導入 - 壁面や窓がエネルギーを生み出す、日独の方向性の違いは?
有機薄膜太陽電池をゼロエネルギービルに - 電力と熱を自給自足する「ネット・ゼロ・エネルギー」
省エネ機器や断熱対策、自然エネルギーを取り入れる
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.