鉄道の変電所にも蓄電池、回生電力を貯蔵して走行中の電車に供給:蓄電・発電機器
首都圏を走る京王電鉄は沿線の変電所に蓄電池を導入する。電車がブレーキをかけた時に発生する回生電力を蓄電池に充電して、他の電車の走行用に放電する仕組みだ。従来は近くを走る電車間でしか回生電力を活用できなかったが、蓄電池を導入することで回生電力の利用効率を高める。
京王電鉄は全車両に回生ブレーキを搭載済みで、電車がブレーキをかけた時に発電した電力を近くで走行中の電車に供給している(図1)。ただし架線を使って回生電力を供給できる範囲は限られているため、余った電力は熱にして放出するしかなかった。
新たに沿線の変電所に蓄電池を導入することで、余剰電力を充電して必要な時に利用できるようにする計画だ(図2)。導入する場所は東京都の八王子市にある相模原線の「堀之内変電所」である。
蓄電池は電気自動車に搭載しているものと同様のリチウムイオン電池を使って容量は2145kWある。電車の定格電圧1650ボルトの状態で、最大1300アンペアの電気を放電することができる。2014年度中に堀之内変電所に設置する予定だ。
京王電鉄は全車両に回生ブレーキを装備しているほか、電車の速度に応じてモーターの電圧や周波数を変化させるVVVF(可変電圧・可変周波数)方式のインバータ制御装置も実装を完了している。この2つの装置を搭載したことにより、車両が1キロメートルを走行するのに必要な電力量は導入前と比べて45%も減少した(図3)。
今後は変電所の蓄電池を使って回生電力の利用効率が上昇すれば、さらに電力の使用量を削減することが可能になる。蓄電池を納入した日立製作所によると、海外の鉄道で電力の使用量を10%以上も削減できた例がある。京王電鉄は堀之内変電所の導入効果を見ながら、他の変電所に展開することを検討していく。
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