お米を食べて「稲わら」は液体燃料へ、1リットル70円:自然エネルギー(2/2 ページ)
大成建設は米を収穫した後に残る「稲わら」から、効率良くバイオエタノールを作り出す技術の開発に成功した。1L(リットル)のバイオエタノールを約70円で製造できる。化学的な前処理工程を一本化することで実現した。化石燃料ではない、有力な液体燃料として利用できる可能性がある。
なぜデンプンが鍵だったのか
大成建設は2008年7月から5年間、サッポロビールと共同で稲わらからバイオエタノールを作り出す事業を進めていた。農林水産省の補助事業である「ソフトセルロース利活用技術確立事業」だ(図3)。
セルロースなどからバイオエタノールを作り出す手法は複数ある。両社は「酵素糖化」と呼ばれる手法を選ぶとエネルギー投入量が最も小さくなり、薬剤の使用量が少なく低コストであると判断した。植物が細胞内で長くつなげた分子を、酵素の力で細切れに分解する手法だ。
酵素糖化は有力な手法だが、前処理が必要だ。両社はアルカリ処理法を開発し、セルロースやヘミセルロースを効率よく分解することができた。図3の設備はセルロースをバイオエタノールの原料として利用するものだ。
ところが、デンプンを酵素(アミラーゼ)によって分解させるには加熱処理による糊化が必要であり、セルロースやヘミセルロースと同じアルカリ処理法は利用できなかった。前処理が一本化できないと、製造コストが下がらない。
大成建設は農林水産省の補助事業終了後も、横浜市戸塚区の技術センターで自主研究を続けており、アルカリ処理をデンプンの前処理に適用する手法を発見した。これが今回の成果の核だ。前処理を一本化できたことが低コストの秘密だ。
電力以外の再生可能エネルギーも必要
「当社は環境ビジネスを手掛けているため、化石燃料を代替する技術を重視している。稲わらは資源としてあまり利用されていないものの、有用だ。今後もこのような研究開発を続けていく。ただし、バイオエタノール製造の事業化についてはまだ公表する段階ではない」(大成建設)。
日本経済は強く化石燃料に依存している。一次エネルギーに占める化石燃料の比率はオイルショック後34年ぶりに9割を突破している(関連記事)。これは全発電量に占める火力発電の比率が9割を超えたことよりも厳しい状態だ(関連記事)。一次エネルギーからは、電力以外にも輸送用の燃料(ガソリンなど)や工業用の燃料(製鉄における石炭)、産業用蒸気などが生み出されており、これらの需要は意外に大きい。例えば輸送用燃料として使われるエネルギー量は電力とほぼ同じ規模だ。
直接電力を作り出す太陽光発電などでは、このようなエネルギー需要はカバーしにくい。化石燃料と同じ使い方ができる再生可能な燃料の開発がどうしても必要だ。その1つの有力な候補がバイオエタノールである。
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