太陽光発電と蓄電池によるスマートグリッド、九州の330世帯で実証試験:エネルギー管理
九州電力は佐賀県と鹿児島県で実施中の「スマートグリッド実証試験」を拡大する。330世帯の一般家庭にタブレット端末を設置して、地域内の太陽光発電や蓄電池と組み合わせた電力の利用形態を検証する試みだ。火力や原子力など集中型の電源を含めて最適な電力需給体制の構築を目指す。
スマートグリッドの実証試験は佐賀県の玄海地区と鹿児島県の薩摩川内地区の2カ所で並行して実施する。それぞれの対象地区には太陽光発電設備と蓄電池を導入済みで、天候によって変動する太陽光発電の出力予測、それに伴う蓄電池の最適制御の手法を検証中だ。7月1日から両地区の一般家庭にタブレット端末を設置して、各家庭の電力使用量の抑制効果も検証できるようにした(図1)。
玄海地区では約100世帯に電力計測装置やタブレット端末を導入した。地区内の2カ所に太陽光発電の実証設備があり、そのうちの1カ所には大型の蓄電池が設置されている(図2)。さらに気象観測装置なども使って、天候による発電量や蓄電量の変動、モニターになる家庭の電力使用量を計測する。
一方の薩摩川内地区では約220世帯を対象に、同様の装置に加えてスマートメーターを併設した。地区内の実証試験場には太陽光発電設備と蓄電池のほかに、配電線の電圧制御を模擬的に試験する設備もある(図3)。太陽光発電設備が送り出す電力によって配電線に逆流が生じる可能性があり、それを防ぐために電圧の制御が必要になる。
九州電力は両地区のモニター向けに仮想の電気料金メニューを用意して、時間帯によって料金を変動させる効果も検証することにしている。モニターの家庭ではタブレット端末の画面に30分単位の電力使用量や毎日の電気料金を表示することができる。電気料金を確認しながら節電に取り組む(図4)。
この実証試験は2015年3月まで実施する予定だ。試験対象の玄海地区と薩摩川内地区には九州電力の2つの原子力発電所が立地している。原子力と再生可能エネルギーを組み合わせてCO2排出量を削減できる効果をアピールする狙いもある。
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