農村の再生は太陽光でスマートアグリ、砂防ダムに小水力発電を:エネルギー列島2014年版(19)石川(2/2 ページ)
火力と原子力の依存度が大きい石川県だが、農村や山間部を中心に再生可能エネルギーが広がってきた。県内で増加している耕作放棄地を再生するために太陽光発電の導入を進める一方、最先端の発電技術を利用した温室栽培にも取り組む。山間部の砂防ダムでは小水力発電所の建設が始まる。
全国で第1位の降水量を小水力発電に
小松市を含めて石川県の南部には山間部が広がり、水力発電所が数多く点在している。石川県は年間の降水量が全国で最も多くて、隣り合う福井県や富山県と同様に水力発電に適した地域である(図4)。県内の水力発電所の大半は北陸電力が運営しているが、自治体を中心に農業用水路などを活用した小水力発電の取り組みも広がってきた。
小水力発電の対象の1つになるのが、県内の各地域にある砂防用の堤堰(えんてい)である。年間を通じて降水量が多いことから、土砂災害を防ぐために設けたダムの一種だ。石川県で最大の「平沢川(ひらさがわ)砂防堤堰」で、小水力発電のプロジェクトが始まろうとしている(図5)。
堤堰の上流から導水管を敷設して、堤堰のすぐ下の地下に設置する発電機まで水を取り組む(図6)。これで水流の落差は約20メートルになる。最大で毎秒1.5立方メートルの水量を利用して、198kWの電力を供給することができる。少ない水量でも効率的に発電できる「S型チューブラ水車」を採用する。
北陸を中心に再生可能エネルギーの開発を手がける新日本コンサルタンツが石川県と協定を結んだうえで、2015年2月に運転を開始する予定だ。年間に290日の稼働日数を想定して、発電量は約100万kWhを見込んでいる。売電収入は3300万円程度になり、15年間かけて投資額の3億円を回収する計画である。
これまで石川県の再生可能エネルギーの導入量は多くなかった。能登半島の北部で大規模な風力発電所が何カ所か稼働しているのが目立つくらいである。固定価格買取制度の認定設備の規模も全国で39位にとどまっている(図7)。
今後は農村を中心に太陽光発電が広がって、規模は小さくても導入効果の高い取り組みが増える見込みだ。再生可能エネルギーを活用した新しい農業のモデルが石川県から生まれる期待は大きい。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北陸編−」をダウンロード
2016年版(19)石川:「農地を太陽光発電で再生、能登半島に新たなエネルギーの風が吹く」
2015年版(19)石川:「地域を守る砂防ダムに小水力発電を、木材と下水はバイオマス発電に」
2013年版(19)石川:「日本海へ延びる長い半島に、風と水と森から電力を」
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同じ土地の中で農作物を栽培しながら太陽光発電
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