打ち上げる「波が下って」電気生む、20本で25kW:自然エネルギー(3/3 ページ)
協立電機はヨシコンと資本業務提携を結び、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証研究に役立てる。出力25kWの波力発電設備を御前崎に設置する。35年利用でき、40円/kWhの発電が可能な装置を作り上げる。
政府はどのように研究開発を支援しているのか
冒頭で紹介したNEDOの研究開発は、3種類の研究から成り立っている(図5)。越波式波力発電は6つある海洋エネルギー関連の実証研究の1つだ。
図5の(2)に要素技術開発とあるのは実証研究よりもさらに将来に役立つことを考えた海洋エネルギー技術の研究だ。実証研究とは異なり、実海洋試験は行わず、実物の数分の1〜数十分の1のモデル(スケールモデル)を用いる。目的は発電コスト20円/kWh以下を実現可能な装置を設計することだ。(3)にある共通基盤研究は、以上の2つの研究の性能試験や評価方法に関する検討をする。実機は用いない。
国が関与する海洋エネルギー開発の取り組みは、経済産業省・NEDOの他にもう1つある。内閣官房の総合海洋政策本部だ。技術開発に力点を置くNEDOとは異なり、総合海洋政策本部は立地の整備を重視している。
海洋エネルギー利用で先行する欧州諸国は、実証実験のために自由に利用できる海域を複数確保している(関連記事)*4)。例えばスコットランド北部の欧州海洋エネルギーセンター(EMEC)だ。
日本ではこのような海域がなかった。大学や企業などが実海域で実証実験を進める場合は、その都度、海運関係者や漁業関係者と個別に交渉を行う必要がある。東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻で教授を務める高木健氏によれば、自ら地元の漁業関係者と交渉し、調整を進めなければならず、研究よりも交渉に時間がかかることがしばしばだという。同氏はNEDOのプロジェクト(水中浮遊式海流発電)に参加している。
これでは研究開発がなかなか進まない。そこで、総合海洋政策本部は2014年7月、新潟県と佐賀県、長崎県、沖縄県の6海域を10年間以上占用できる実証フィールドとして選定、同時に岩手県と和歌山県、鹿児島県、沖縄県の5海域を次候補として選び出している。なお、静岡県はいずれの海域にも選出されなかった。
*4) NEDOによれば欧州の研究開発は5つのステージからなる。最初の2ステージは陸上試験、その後の3つのステージは実海域試験だ。多くの研究開発はステージ4や5に達し、一部は商用運転に入ろうとしている。日本は陸上試験の段階にとどまっており、今後実海域試験に入る形だ。
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