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可搬型エネルギーの時代、電動工具の進化に潮目を見る和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(5)(4/5 ページ)

リチウムイオン蓄電池の改善が、エネルギー問題解決の一助となっている。日常利用するスマートフォンやノートPC、さらには家庭用蓄電池や電気自動車へと活躍の場が広がっているからだ。このような変化は、さまざまな機器の使い方を変えていく。今回は普段あまり光が当たっていない「電動工具」と蓄電池の関係を調べた。蓄電池の導入にはどのような課題があるのか、蓄電池導入によって機器の用途がどのように変わってきたのか。主要企業2社に聞いた。

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ボッシュの考える充電式工具

 ドイツRobert Boschは、1886年創立の老舗企業。自動車用部品と電動工具のメーカーだ。日本法人のボッシュも両分野の製品を扱っている。同社の電動工具事業部マーケティング部ゼネラル・マネージャーである鈴木渉氏に、充電式電動工具について聞いた(図5)。


図5 ボッシュの鈴木渉氏

和田氏 充電式電動工具が増えている。ボッシュではどのような考え方で進めているのか教えて欲しい。

鈴木氏 従来、電動工具といえば、100Vのコンセントにつなぐもの、電源コードを伸ばして使うものであり、充電式はこれを補完する位置付けだった。蓄電池の性能が向上してきたため、10年ほど前から充電式も顧客に受け入れられるようになった。プロのユーザー向けだけでなく、日曜大工(DIY)で使う一般の方も同様である。現在は電源コード式を充電式が超えている。業界全体では、売価ベースで充電式が約6割、電源コード式が約4割ではないだろうか。

和田氏 ボッシュでは売上比率はどこまで高まったのか。今後、充電式をどのように開発していくのか。

鈴木氏 当社はまだ充電式が6割に達していない。当面はこれが目標となる。われわれは、日本における販売会社という立場だ。ドイツ本社が司令塔として動き、世界中の開発部門で電動工具を開発している。グループとして世界を幾つかのブロックに分け、それぞれの地域の使い方に合うように製品を開発していることが特長だ。アジアでは、日本、中国、マレーシアがリードカントリーという位置付けにある。

和田氏 製品化の際に、充電式にするのか、電源コード式にするのか、開発の閾値をどのように設定しているのか。

鈴木氏 非常に難しい質問だ。当社では充電式を開発する際の社内基準が厳しく、時間をかけて開発している。電源コード式から充電式に変更する場合は、幾つかの要素をフィルター(ふるい分け)として検討している。例えば、パワーや価格(充電式は一般的に高価)、重さ、稼働時間の長さである。

 プロ用であれば、1回の充電でどれだけ作業効率を高めることができるかがキーだ。DIY用では、1台でいろいろな機能を持つこと、さらに価格が重要だ。いずれにしても、安全性を最重要視して製品を開発している。

和田氏 充電式工具にはかなり多様な機器がある。今後どのような製品エリアを伸ばそうとしているのか。

鈴木氏 基本的な考え方は、1つの電池でいろいろな作業ができること。これは工具にとどまらず、日常生活に役立つ機器であればよいと考えている。先ほど説明したように、世界中の拠点で開発している。完成した製品を取捨選択し、日本市場に投入している。

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