日本ならでは木造建築のメガソーラーが完成、1万4000本の木材を利用:自然エネルギー
兵庫県の山間部にある人口1万8000人の町に、日本初の木造建築によるメガソーラーが完成した。太陽光パネルを設置する架台を1万4000本の木材で組み上げた。発電能力は5MWで、年間の発電量は1500世帯分に相当する。県内産の木材を活用することで山林の育成に生かす狙いがある。
日本で初めての木造メガソーラー「佐用・IDEC 申山(もうすやま)太陽光発電所」が6カ月間の工事を経て10月14日に完成した(図1)。5MW(メガワット)の発電能力で11月から運転を開始する。年間の発電量は533万kWhを見込んでいて、一般家庭で約1500世帯分の電力を供給することができる。
この木造メガソーラーは兵庫県の佐用町(さようちょう)が電気機器メーカーのIDECと共同で、町内にある広さ10万平方メートルの残土処分地に建設した。佐用町が木造メガソーラーを建設した背景には、5年前の2009年に発生した豪雨による大水害がある。
周辺の山林で大量の木が倒れて、その流木が川の流れをせき止めたことで浸水被害が拡大した。防災のために定期的な間伐によって山林を健全に育成するとともに、県内産の木材の用途を広げる必要があった。そこで木材を活用したメガソーラーの建設に着手した。
太陽光パネルを設置する架台を木造建築の技術で組み上げた(図2)。使用した木材は長さが3〜4メートルの県内産の木材を中心に合計で1万4000本に達した。架台に設置した太陽光パネルの枚数は約2万枚にのぼる。木造の架台は通常の鋼鉄製と比べてコストが安く済むうえに、設置に要する作業時間を短縮することができた。
総事業費は土地の造成費や送電線の敷設費を含めて約15億円かかった。これに対して年間の売電収入は2億2000万円を見込んでいる。この発電事業は佐用町とIDECが共同で設立した「佐用・IDEC メガソーラー有限責任事業組合」が運営する。佐用町は兵庫県の西部に位置していて、人口は約1万8000人、総世帯数は約7000世帯である。
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