木質バイオマスでコージェネ、1キロのチップから3kWhの電力と熱:蓄電・発電機器
ドイツを中心に木質バイオマスによるコージェネレーションシステムを展開するSpanner Re2社が日本でも販売を開始した。木質チップをガスに転換してから電力と熱の両方を供給することができ、大気中に有害物質を排出しない点が最大の特徴だ。すでに福島県で第1号が稼働している。
Spanner Re2社が販売するコージェネレーションシステムは2つの装置で構成する。木質チップを燃焼させて木炭ガスを生成する装置と、木炭ガスから電力と熱を供給する装置である(図1)。木炭ガス生成装置は木を完全燃焼させることが可能で、燃焼後は炭素ガスと水素ガスのほかに、水とCO2と灰を排出するだけである。煙は出ない。
コージェネレーション装置では炭素ガスと水素ガスの両方を利用する。一般のコージェネレーションシステムは都市ガスかLP(液化石油)ガスを燃料に利用するが、木質バイオマスから転換したガスを利用することで実質的にCO2フリーのエネルギー供給システムになる(図2)。木は生育中に光合成を通じて二酸化炭素を吸収するからだ。
1基あたりの発電能力は45kWで、発熱能力は115kW相当になる。乾燥させた木質チップを1キログラム燃焼させると、1kWhの電力と2kWhの熱を発生する。年間に7500時間の稼働を目安に、1基のシステムから一般家庭で約90世帯分の電力と熱を供給することができる。
これまでにドイツを中心にホテルなどで約200システムが稼働している(図3)。日本国内では福島県の郡山市で第1号が2014年9月に運転を開始した。システムの価格は2つの装置と稼働までのサポートを含めて約5000万円になる。地方のホテルのほか、都市のマンションやオフィスビルにも販売する計画だ。木質バイオマスの調達などで国内企業との連携を検討している。
東日本大震災を機に、災害に強いガスコージェネレーションシステムを導入する企業や家庭が増えている。Spanner社のシステムは再生可能エネルギーの木質バイオマスを燃料に利用できるため、BCP(事業継続計画)の対応とCO2排出量の削減に取り組む企業に適している。木質チップを安定して調達できる体制が整えば、日本でも導入する企業や自治体が増えそうだ。
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