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3Dプリンタで都市を建設、深海で100MW発電自然エネルギー(3/4 ページ)

清水建設は2014年11月、深海未来都市構想「OCEAN SPIRAL」を公開した。水深3000〜4000mの海底から海面まで、3つの部分からなる「都市」を作り上げるというもの。人口5000人を維持するだけでなく、外部に電力や食料を送る機能も備える。2030年時点の予想技術レベルでは、3兆円と5年の工期で立ち上げられるという。

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3つの部分の働きは?

 以下では、OCEAN SPIRALの構成、機能、施工方法について紹介する。OCEAN SPIRALは大気、海面、深海、海底を垂直統合した海洋構造物ということができる。大気と海面を担うのが、最上部の球体「BLUE GARDEN」(図3)。主として人が活動する場となる。直径は500mあり、上部のわずかな部分が海上に飛び出し、船舶などの交通手段を利用できる。

 BLUE GARDENの中心軸には75層(75階建)の構造物「中央タワー」を配置する。中央部がいくぶん細い「臼」のような形のタワーだ。図3の中央部に白く描かれている

 タワーには400客室のホテルと1万m2の商業・コンベンション施設の他、5万m2のオフィス、1150戸の居住施設が備わっている。研究・実験施設(14万m2)もある。タワー全体が入居者4000人、来訪者1000人という規模の都市として機能する。


図3 BLUE GARDENの外観イメージ 出典:清水建設

 BLUE GARDENは空調性能にも優れるという。海面近くの例えば30度の水温、−500mの26度の水温、−1000m〜−1500mの2〜3度の深層水、海洋温度差発電の熱を利用した排気を組み合わせることで、空調、除湿のエネルギーが少なくて済む。

 図3の下部に見えるドーナツ型の部分は深海ゴンドラ発着フロアだ。ここから最深部(EARTH FACTORY)までテンションレグと呼ぶケーブルを多数張る。漂流を防ぎ、位置を保持するための係留機構だ。深海ゴンドラは最深部まで向かう。

 BLUE GARDENの直下には直径200mの球体「スーパーバラストボール」を3つ垂直方向に並べる。ちょうど串団子のような配置だ。図3にはそのうち1つの上半分が描かれている。内部の砂と空気の比率を変えることによって浮力の調整に役立てる。例えば、台風時にはBLUE GARDEN全体を水面下に沈めるといった運用を想定しているという。

3Dプリンタで作るBLUE GARDEN

 BLUE GARDENの外周部は2種類の部材からなる。1つは長さ50mの三角形をした樹脂コンクリート製トラスを用いた外周フレーム材。樹脂コンクリートは一般のコンクリートよりも強度が高いことに特徴がある。鉄筋ではなく樹脂配筋を用いる。もう1つは透明アクリル板と繊維強化プラスチック(FRP)で作ったリブからなる外壁だ。窓のような機能を果たす。

 BLUE GARDENを洋上完全自動化施工で作り上げる。樹脂コンクリートの打設と樹脂配筋を施したのち、次第に沈埋(ちんまい)する施工法を考えている。「沈埋とはいっても沈埋トンネルのように構造物を海底に設置したあと接合するのではなく、現場の海面で連続的に製造しながら沈めていく形を採る」(同社)。これが冒頭で紹介した3Dプリンタを使うという意味だ。

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