ごみ発電の完全自動化へ、蒸気量などから最適な燃焼パターンを予測:スマートファクトリ
全国各地にある清掃工場に発電プラントを納入している日立造船がIT(情報技術)を活用した運転管理システムの実証に着手する。発電プラントの蒸気量などを過去のデータと組み合わせて分析することにより、燃焼状態の異常を検知するほか、発電量が最大になる燃焼パターンを予測する試みだ。
日立造船は新たに発電プラントの「最適運転管理システム」を構築して、2つのテーマに取り組む。1つは焼却炉の中の燃焼状態の異常を自動的に検知するもので、現在のように熟練したオペレータが監視画面を見て判断するよりも早く検知できるようにする。もう1つは燃焼に伴って発生する有害物質を最小限に抑えながら、発電量を最大にできる燃焼パターンを予測することである。
そのために日立造船が2001年から開発してきた3種類のプラント監視システムと、日本IBMの異常検知・予防保全ソリューションの「PAO」を組み合わせる。大阪市にある日立造船の本社には「遠隔監視・運転支援センター」があって、全国各地の清掃工場から送られてくる発電プラントの蒸気量や炉内温度、ごみ投入量などのデータが大量に蓄積されている(図1)。
こうして集められたビッグデータをIBMの分析ソフトウエアなどを使って解析することにより、燃焼状態の変化を予測したり、発電量を最大にする燃焼条件を導き出したりすることが可能になる。ごみ発電プラントからは窒素酸化物やダイオキシンなどの有害物質が排出するため、その発生を抑制しながら発電量を最大化する。最適な燃焼パターンを10分〜30分程度先まで予測できるようにすることが目標だ。
ごみ発電はバイオマス発電の1つに位置づけられて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象にもなる。全国の自治体が運営する清掃工場に発電プラントを導入するケースが増えて、売電収入を安定的に確保するために異常検知や最適燃焼が求められている。日立造船は現在の「遠隔監視・運転支援」を発展させて、最適運転管理システムによる「完全自動化」を目指す。
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