太陽光発電は安定成長へ、バイオマスと小水力が躍進する1年:2015年の電力メガトレンド(1)(3/3 ページ)
固定価格買取制度が4年目を迎えて、日本の再生可能エネルギーは大きな転換期にさしかかった。急速に拡大した太陽光発電が安定成長に向かう一方で、農山村を中心にバイオマスと小水力発電の導入が活発になっていく。環境影響評価に時間のかかる風力と地熱もようやく動き始める。
規制緩和で地熱発電の開発計画が相次ぐ
再生可能エネルギーの中で風力と地熱の2種類は開発に長い期間を必要とする。出力が1万kW以上の発電設備を建設する場合には、事前に環境影響評価を実施することが義務づけられているためである。現在は完了までに3〜4年かかっているが、政府は手続きを簡素化して期間を半分に短縮する準備を進めている。遅くとも2016年度までに実施する予定で、風力と地熱の開発計画も増えていく。
風力発電の導入量は2011年度から低い水準にとどまっている(図9)。環境影響評価の過程で地域の反対を受けるケースも少なくない。2014年度からは洋上風力の買取価格が新設されたことで、大規模な開発プロジェクトが動き始めた。洋上風力では漁業との共存が最大の課題になっていて、地域ぐるみの取り組みが欠かせない。その点では原子力と比べた是非も問われるところだ。
図9 風力発電の導入量。RPS(Renewables Portfolio Standard)は余剰電力買取制度、FIT(Feed-In Tariff)は固定価格買取制度の英文略称。出典:資源エネルギー庁(NEDOのデータをもとに作成)
むしろ最近では地熱発電のほうが地元の理解を得やすい状況になってきた。日本は地熱の資源量が世界で3番目に多く、しかも発電量が安定しているために地域の電力源として期待は大きい。
地熱資源が豊富な場所は火山地帯にあり、その多くは国立・国定公園に指定されている。政府は国立・国定公園に地熱発電所を建設することを厳しく制限してきたが、有望な再生可能エネルギーである地熱の導入量を拡大するために規制を緩和しつつある。その効果で新規の開発プロジェクトが続々と始まっている(図10)。
地熱発電は出力が1万kWを超える大規模なものから、温泉水を利用した小規模なものまで幅広い。大規模な発電設備は調査段階を含めると運転開始までに10年以上かかる。現時点で最終段階にあるプロジェクトは全国で30カ所を超えていて、いずれも3〜4年以内には運転を開始する見通しだ。
これまで太陽光が牽引してきた日本の再生可能エネルギーは2015年を節目に、新たな広がりを見せる。バイオマスと小水力が全国各地で活発になり、風力と地熱も次第に増えていく。再生可能エネルギーの拡大に慎重な意見もあるが、地球温暖化と放射能汚染のリスクを考えれば、火力や原子力よりも優先して取り組むのは必然である。
連載:2015年の電力メガトレンド
(3)「電力の自由化でエネルギー産業は激変、ガスと石油を加えて水平連携へ」
(4)「エネルギーミックス決定へ、原子力と再エネともに20%超の未来」
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