風力発電の開発プロジェクトが拡大、東北・北海道を中心に500万kWを超える:自然エネルギー
風力発電は2011年から導入量が減少したが、再び増加に転じる見通しだ。全国で開発中のプロジェクトを合計すると発電規模が500万kWを超えて、既存の風力発電所の2倍に達する。陸上に加えて洋上の計画も広がり始めたが、送配電ネットワークの接続可能量の問題を解決する必要がある。
日本は海外の先進国に比べて風力発電の開発で大きく後れをとっている。2012年10月から環境アセスメント(環境影響評価)の対象になったことも影響して、導入量が2011年度から急速に減ってしまった(図1)。ただし2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降、東北と北海道を中心に開発プロジェクトが増えてきた。
図1 風力発電の導入量。RPS:余剰電力買取制度(Renewables Portfolio Standard)、FIT:固定価格買取制度(Feed-In Tariff)。出典:資源エネルギー庁(NEDOのデータをもとに作成)
資源エネルギー庁がまとめたデータによると、2013年度末の時点で稼働している風力発電所の規模は271万kWだった。これに対して開発中の風力発電所を合計すると、2倍の524万kWにのぼる。すべてが運転を開始すれば、国内の風力発電の規模は一気に3倍に拡大する。
地域別に見ると、東北が最も多くて全体の約半分の268万kWを占める(図2)。特に青森・岩手・秋田の3県に集中している。次いで北海道が159万kWで、そのほかの地域は30万kW未満である。全体の8割を東北と北海道が占めている偏った状況が今後の大きな課題だ。
海に囲まれた日本では洋上風力も有望で、2014年には関東や中部を含めて全国で開発プロジェクトが始まった(図3)。新たに買取価格が1kWhあたり36円(税抜き)に設定されたことも開発を後押ししている。太陽光(非住宅用)の32円を上回った効果は大きい。
資源エネルギー庁の予測では、既存の風力発電所を含めて2020年に陸上で600〜640万kW、洋上で13〜15万kWが運転を開始する。さらに2030年には陸上で1050〜1140万kW、洋上は100〜110万kWに拡大する見通しで、合わせて最大1250万kWに達する可能性がある。
そこで問題になるのが、電力会社の送配電ネットワークに接続できる「連系可能量」(接続可能量)の制限だ。太陽光発電の導入量が急増した結果、九州電力など7社が風力発電に対しても連系可能量を設定している(図4)。このまま連系可能量が増えなければ、2030年までに見込まれる新規の風力発電所のうち半分に相当する630万kWが接続できなくなってしまう。しかも北海道と東北の2地域だけである。
この問題に対して政府は2つの解決策を実施する方針だ。1つは北海道と東北にある風力発電所の電力を需要の大きい東京へ送電する。もう1つは北海道と東北の変電所に大型の蓄電池を設置して、風力発電による出力変動を抑制することで地域内の連携可能量を増やす方法である。
2013年度から風力発電を対象にした連系設備の増強に国家予算を割り当てて、実証実験を開始している。2015年度も「風力発電のための送電網整備実証事業費補助金」に105億円の予算を確保した。北海道と東北を対象に、長期間かけて送配電ネットワークの整備を進めていく。
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