再生紙メーカーが工場に木質バイオマス発電所、70億円かけて化石燃料を減らす:スマートファクトリ
鳥取県にある創業54年の再生紙メーカーが木質バイオマス発電所を自社工場の中に新設することを決めた。発電能力が16.7MWに達する大規模な設備を70億円かけて建設する計画だ。再生可能エネルギーを活用して化石燃料を減らし、再生紙の利用拡大と合わせて環境負荷の軽減を図る。
1961年に創業した三洋製紙の主力事業は、段ボールの素材や除草効果の高い農用再生紙の製造・販売である。原料にはリサイクルした古紙パルプを利用する一方、工場の製造工程を中心にCO2排出量の削減に取り組んできた。
鳥取市内の本社工場には自家発電設備を導入して電力の9割をまかなっているほか、電気集塵装置を併設して煙突からの排気を浄化している(図1)。新たにコージェネレーション方式の木質バイオマス発電所を工場の中に建設して、製造原価の低減とCO2排出量の削減を図る。
発電能力は16.7MW(メガワット)で、バイオマス発電としては規模が大きい。燃料には木質チップのほかに、東南アジアから輸入するPKS(パームヤシ殻)などを利用する予定だ。発電設備の建設費を中心に投資額は約70億円を見込んでいる。社員126人の中堅メーカーながら、思い切った投資で再生可能エネルギーの拡大に取り組む経営姿勢は称賛に値する。
バイオマス発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は80%であることから、これをもとに計算すると年間の発電量は1億1700万kWhに達する。一般家庭で3万2000世帯分の使用量に相当する規模になる。発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する計画だ。運転開始は2016年12月を見込んでいる。
鳥取県内では木質バイオマス発電の取り組みが活発になってきた。2014年5月に県が「とっとり森と緑の産業ビジョン」を発表して、県産の木材の需要拡大に乗り出したことが大きい(図2)。木質バイオマスによる発電事業や熱供給事業を対象に補助金制度も整備した。島根県は面積の74%を森林が占めていて、林業の活性化が大きな課題になっている。
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