阿蘇のふもとで地熱と小水力を増やす、メガソーラーに続く電力源に:エネルギー列島2014年版(43)熊本(2/2 ページ)
熊本県では沿岸部を中心にメガソーラーが続々と運転を開始している。その一方で阿蘇山の周辺地域では地熱や水力を生かした発電設備の建設計画が活発になってきた。天候の影響を受ける太陽光や風力発電の導入量が制限を受ける中で、安定した電力源として地熱と小水力発電が広がり始める。
送電能力の不足が山間部を悩ませる
熊本県は農業の算出額でも全国で5番目の規模を誇り、県内の全域に農業用水路がはりめぐらされている。地熱と同様に地産地消型の再生可能エネルギーを拡大する目的で、県が推進する小水力発電の10年計画が2014年から始まっている。
山間部を中心に12カ所の候補地を選定して発電量や事業費などを試算した(図4)。発電能力が最も大きい場所では140kWを想定できる一方、10kW以下の小規模な候補地も何カ所かある。このうち収益性が見合う場所から開発を進める予定で、農林水産省の補助金などを活用しながら発電設備を導入していく方針だ。
県の10年計画よりも前に、地域主導の小水力発電プロジェクトも動き出している。阿蘇山からすぐ南側にある南阿蘇村の農業用水路で、発電能力が198kWの設備を導入する計画である。2014年1月に固定価格買取制度の認定も取得したが、九州電力の送電能力が不足して接続できない状況になっている。
2014年9月に九州電力が発端になって全国に拡大した「接続保留」の問題が、すでに熊本県内の山間部では始まっていたわけだ。結局のところ、発電事業者が工事費の一部を負担する形で、九州電力が3年間かけて送電線を増強することになった。再生可能エネルギーを地産地消する取り組みが送電能力の不足によって遅延するのは残念な状況である。
一方で工業地帯が広がる沿岸部ではメガソーラーが続々と運転を開始している。最近の1年間に発電能力が20MWを超える大規模な発電所が2カ所で動き始めた。1つ目は南部の芦北町(あしきたまち)で2014年4月に稼働した21.5MWのメガソーラーである(図5)
以前は牧場があった33万平方メートルの敷地に建設したもので、土地の区画や傾斜を残した状態で太陽光パネルを設置した点が特徴だ。年間の発電量は2300万kWhを見込んでいて、一般家庭で6400世帯分の使用量に相当する。芦北町の総世帯数(約7500世帯)の85%に匹敵する規模になる。
2つ目のメガソーラーは北部の荒尾市で2015年2月1日に発電を開始したばかりだ。かつて日本の産業を支えた三池炭鉱があった地域で、石炭からコークスを作る工場の跡地に建設した。有明海に面した28万平方メートルの平坦な土地に、発電能力が22.4MWの設備を展開している(図6)。
年間の想定発電量は2200万kWhで、6000世帯分の電力を供給することができる。荒尾市の総世帯数は約2万4000世帯あって、その4分の1をカバーできる規模になる。使命を終えた炭坑や牧場が地域の新たな電力源として再生する。災害に強い分散型のエネルギー供給システムが熊本県内で拡大を続けていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −九州編 Part1−」をダウンロード
2016年版(43)熊本:「建築廃材や竹でもバイオマス発電、中小水力は全国1位」
2015年版(43)熊本:「地熱発電所が湯煙を立ち上げ、県民発電所は太陽光で動き出す」
2013年版(43)熊本:「メガソーラーが県内47カ所に急拡大、6年も前倒しで目標達成へ」
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