買取制度で初めて1MW超の地熱発電、鹿児島の指宿温泉で運転開始:自然エネルギー
鹿児島県の指宿市にある温泉施設で発電能力1.5MWの地熱発電所が運転を開始した。固定価格買取制度の開始から1年半が経過して、1MWを超える地熱発電は初めてのケースになる。低温の地熱で発電可能なバイナリー方式の設備を使って2500世帯分の電力を供給できる。
九州最南端の温泉地として有名な指宿温泉に新しい地熱発電所が誕生した(図1)。温泉と医療の複合施設である「メディポリス指宿」の340万平方メートルに及ぶ敷地の中に、米国製の地熱発電設備を導入して2月18日から運転を開始した。
発電能力は1.5MW(メガワット)に達する。2012年7月に固定価格買取制度が始まって以来、1MWを超える地熱発電設備が運転を開始したのは初めてだ。年間の発電量は900万kWhを見込んでいて、一般家庭で2500世帯分の使用量に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は68%になり、地熱発電の標準値70%と同等の高い水準である。
発電した電力は全量を売電する方針で、地熱発電の買取価格(1kWhあたり40円、税込み)を適用すると年間の収入は3億6000万円になる。地熱による電力は15年間の買い取りが保証されていて、累計で54億円の売電収入を得られる見通しだ。
発電所の基幹部分は米国オーマット・テクノロジーズ社のバイナリー方式による設備を導入した(図2)。合わせて地下から蒸気と熱水を汲み上げるための生産井1本と発電後の熱水を地下に戻すための還元井1本の合計2本の井戸を掘削した。汲み上げた熱水はほぼ全量を地下に還元することにより、温泉資源には影響を与えないと判断している。
バイナリー方式では地下から汲み上げた蒸気と熱水を使って、沸点の低い媒体を気化する方法で発電機のタービンを回転させる(図3)。発電後の媒体を冷却して液化してから循環させるのと同時に、気化に使った熱水を地下に還元する。媒体と地熱の2つを循環させることから、2進法を意味するバイナリー方式と呼ばれている。
指宿市には九州電力が地熱発電による「山川発電所」(発電能力30MW)を運転していて、従来の発電設備では利用できない低温の蒸気を使ってバイナリー方式の発電設備(0.25MW)を2013年から実証運転中である。このほかにも再生可能エネルギー事業を展開するジオネクストグループがバイナリー方式による0.26MWの地熱発電設備を指宿市内に建設中だ。
地熱発電は天候の影響を受けずに安定した電力を供給できるため、再生可能エネルギーの中でも優先的に電力会社の送配電ネットワークに接続することができる。特にバイナリー方式の発電設備は工事が1年程度で完了する利点があり、全国の温泉地域で導入計画が進んでいる。
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