太陽光発電で怖い「アーク放電」、0.25秒で検出・遮断して発電は継続:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
三菱電機は2015年2月、太陽光発電システムで発生するアーク放電事故を0.25秒以下で検出、遮断できる技術を開発したと発表した。従来よりも8倍程度高速だ。遮断したとしても健全な回路を使って発電を継続できるという特徴がある。
遮断技術では磁石まわりを工夫
アーク放電を遮断する手法は複数ある。広く使われている手法は放電の距離を磁石によって引き延ばし、放電に必要な電圧を高め、放電を止めるというもの。アーク放電は空気中を飛ぶ電子の流れ。従って磁石を使うと流れる道筋を引き延ばすことができる(ローレンツ力)。
この手法の課題は2つあるという。1つはアーク放電を引き延ばす空間が必要になり、開閉器の体積が大きくなること。もう1つは電流の向きが逆の場合に、引き延ばされる方向が変わってしまうことだ。遮断性能の低下につながる。
今回採用した同社の遮断技術「ARC SWEEPER」*1)では、磁石の磁気性能を大幅に高めて構造を工夫することで、通電方向に関係なく、瞬時に遮断が可能になったという。15〜30Aの電流に対応できる。
ARC SWEEPERではDC閉塞器の内部に、上下方向へ正極と負極に分かれる接点が内蔵されている。遮断時には正極、負極間にアークが飛ぶ。正極と負極の間には横方向に延びる鉄の棒(吸引棒)が配置されており、強力な磁石につながっている。棒と磁石は樹脂で絶縁されている。「アークが発生すると、磁力線とアーク電流の関係から、鉄の棒の方向にアークが引っ張られて、アークを遮断する。接点間の通電方向が変わると、アークは鉄の棒の反対側の側面に沿って引っ張られるので、通電方向に依存せず、アークを遮断できる」(三菱電機)。棒状の構造が通電方向の依存性をなくし、かつ、小型化に向くとした。
同社によれば北米では直流回路の接続不良などが原因となって、アーク事故が多発しているという。このため、アーク検出器の設置が米国で規格化されており、IEC(国際電気標準会議)でも規格標準化活動が進行中だという。「標準化の動向を見て、今回の技術を製品につなげていきたい」(同社)。
*1) 三菱電機技報 2014年9月号「低圧遮断器の技術変遷と今後の展望」には、ARC SWEEPERの技術の内容が紹介されている。2013年には400Vの直流開閉機にARC SWEEPER技術を搭載。「今回はこの技術を利用した。750V対応品まで製品化済みだ」(三菱電機)。
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