静岡県磐田市でスマートアグリのモデルケースを創出へ:スマートアグリ(2/2 ページ)
富士通、オリックス、増田採種場、静岡県磐田市は、新たなスマートアグリカルチャー事業の創出に向けて協業することを発表。オープンイノベーション型農業のモデルケース創出を目指すとともに、先進技術によって実現する新たな農業の姿を模索していくという。
データセンター型のビジネスモデルを活用
新会社である磐田スマートアグリカルチャー事業では具体的には3つの事業を運営する。1つ目は従来の生産・加工・販売のプロセスを最適化する生産・加工事業だ。農業生産法人との連携を進める他、開発・マーケティングプロセスにおいて、種苗・栽培・流通の各機能を最適に管理できるようにする。実際に富士通では以前から農業向け基幹システム「Akisai」を展開しており、農業における経営や運営プロセスの効率化に取り組んでいる(関連記事:田植え作業を“カイゼン”!? 農業に生きる製造業ノウハウ――富士通)。新会社でもこれらの業務プロセスの改善とともにそれぞれの業務プロセスにおける情報連携を実現することで、サプライチェーンとして最適な管理を実現する。
2つ目がインフラアウトソーシング事業の展開だ。これは高度な環境制御が施された種苗・栽培施設を用意し、これらを種苗企業や農業法人などにレンタルするというインフラアウトソース型のビジネスだ。種苗企業や農業法人などは、財務面で弱い企業が多く、最新の設備を利用したくてもできないという背景がある。インフラを期間に応じたサービス型ビジネスとして提供することで、費用負担を小さく、最新の設備が利用できるようにする。須藤氏は「富士通ではデータセンターの構築・運営のノウハウを持つ。データーセンターのビジネスモデルを農業に持ち込む」と述べている。
3つ目が種苗ライセンス事業だ。日本の種苗産業は、高い品種開発能力を持つにもかかわらず、資本力やマーケティング力の不足により、開発品種を普及させることができていない。そこで、種苗・生産・流通を有機的に一体化し、埋もれていた品種の高付加価値化を実現するとともに、これらで得られた知見や技術を権利化し、このライセンスを提供するライセンスビジネスモデルの構築を目指すという。須藤氏は「毎年数多くの品種が世に出ることなく埋もれている。海外では既にキウイフルーツやリンゴなどで成功しているケースもあり、日本でもできるはずだと考えている」と語っている。
2015年下期に事業開始を予定
今後は、2015年度下期の生産開始に向け、準備会社で用地の確保や各種申請などを進めていく計画だという。事業用地については磐田市内に約10ヘクタールを当初は予定する(図3)。
パートナー企業については、種苗企業では増田採種場の他、横浜植木、アサヒ農園、ベルグアースがパートナーとして参加予定。農業生産者では、宮本農園、アグリ・ベリー、グロー、農業コンサルティング企業ではコネクト・アグリフード・ラインズが参加するという。
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