農業とITの“言語”を合わせるプラットフォーム創出へ:スマートアグリ
慶應義塾大学SFC研究所 アグリプラットフォームコンソーシアムは、農業へのICT活用促進を目的とし、農業ITのグランドデザインとガイドラインを立案し、その普及に取り組む方針を示した。農業における新たなICT活用のプラットフォーム創出を目指す。
農業へのICT活用の重要性が叫ばれているが、実際にはそれぞれの距離は遠く、一般的に利活用するには障壁が高いのが現状だ。その“溝”を埋めるべく、慶應義塾大学SFC研究所 アグリプラットフォームコンソーシアム(以下、アグリプラットフォームコンソーシアム)は2015年3月26日、農業ICTと農業情報標準化に向けて、ガイドラインの作成と農業情報流通プラットフォーム構築を推進していくことを発表した。
IoT(モノのインターネット)関連技術の発展により、農業分野へのICTの活用は急速に広がっている。一方で日本の農業が抱える課題は多く、就農人口の減少や高齢化、耕作放棄地の拡大などにより、ICT活用による業務プロセスの抜本的な改善が求められている状況だ。日本政府も2014年度に「農業情報創成・流通促進戦略」を策定するなど、ICT活用の動きが本格化している。
農業分野でICTを活用するには「異なるサービス間での情報連携が困難であること」や「農業情報の知的財産の扱いが不明確なまま情報蓄積が進んでいること」の2点の課題があるとされている(平成26年度農林水産分野におけるIT利活用推進調査)。課題解決のためには、それぞれの情報が連携可能な「標準化」が必須であり、情報連携を行うプラットフォームの創出が求められている。
これらの取り組みは政府が率先して行うものだが、そのガイドライン作成の一部をアグリプラットフォームコンソーシアムで担うという。
アグリプラットフォームコンソーシアムは、慶應義塾大学 環境情報学部 教授の村井純氏が代表を務める団体で2010年4月に設立された。慶應義塾大学や東京農工大学、明治大学、北海道大学などの大学をはじめ、伊藤忠テクノソリューションズ、NECソリューションイノベータ、セールスフォース・ドットコム、日本IBM、NEC、富士通などのICT関連企業、クボタやヤンマーなどの農業機械企業などが参加していることが特徴だ。
村井氏は「IoTの普及による変化を考えた時、データを常に取得し続けることでさまざまな知見がデータ化され、“知見”を共有できる時代になる。この知見を結び付けることが新たな発展につながっていくと考えている。しかし、そのためにはこれらを結び付けるためのプラットフォームが必要になる。アグリプラットフォームコンソーシアムは農業とICTを結び付け、農業の新たな情報基盤を作るために活動を行ってきた」と述べる。
多岐にわたる農作業の言葉
アグリプラットフォームコンソーシアムでは、具体的には「農作業の名称」や「環境情報のデータ項目および関連項目」においてガイドラインの立案を進めていくという(図1、図2)。
「農作業は地方ごとにそれぞれのやり方があり、作業や手法なども言葉が異なる。これらを統合していくことがまず大事になる。また農作業に必要な環境情報やその取得方法なども多岐にわたっており、これらの指針を作ることが必要となる」と村井氏は述べている。
今後は、同コンソーシアム内で参加大学や参加企業との話し合いを進め、半年から1年でこれらの領域のガイドラインを立案する予定としている。
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