ダムの建設で古い水力発電所が水没、2倍の規模に生まれ変わる:自然エネルギー
北海道の夕張市にある湖のほとりに大規模なダムが完成して、同時に水力発電所が運転を開始した。発電能力は2万kWを超えて、一般家庭2万4000世帯分の電力を供給する。洪水対策のために造った新しいダムによって水没した古い水力発電所に代わるもので、発電規模は約2倍に拡大した。
北海道庁が運営する水力発電所は中部の夕張市を中心に8カ所ある(図1)。発電能力を合計すると5万kW(キロワット)を超えて、2013年度には2億6000万kWhの電力を供給した。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると、7万3000世帯分に相当する電力になる。
8カ所のうち発電能力が2番目に大きい「二股(ふたまた)発電所」は1960年から50年以上にわたって稼働してきたが、2013年8月に廃止した(図2)。
周辺地域の治水対策のために現在よりも規模の大きいダムを建設する必要があり、そのダムの中に水没するからだ。代わりにダムの規模に合わせて発電能力を大幅に高めた水力発電所を新しいダムの直下に建設した。
約5年間の工事を経て新しい「シューパロ発電所」が完成して、2015年4月1日に運転を開始した(図3)。発電能力は二股発電所のほぼ2倍に匹敵する2万8470kWである。年間の発電量は8700万kWh(キロワット時)に達して、この発電所だけで2万4000世帯分の電力を供給することができる。夕張市の総世帯数(約5400世帯)の4倍以上の規模になる。
発電所がある夕張市は北海道のほぼ中央に位置している。夕張山地から流れる夕張川は水量が多く、下流の地域は洪水による被害に悩まされてきた。発電所の名前に使われているシューパロはアイヌ語の「シ・ユーパロ」(鉱泉の湧き出る源)から来ている。ユーパロは夕張の語源でもある。
洪水対策のために夕張川の上流にダムを建設してできた人造湖が「シューパロ湖」である。このダムの規模を大きくして洪水対策を強化するのと同時に、水力発電所を造り直した(図4)。二股発電所と比べると、発電に利用できる水量が最大1.3倍に増えて、水流の落差も1.4倍に拡大した。
水車発電機は規模の大きい1号機と小さい2号機の2種類がある(図5)。1号機は季節や天候によって水量が変動する「灌漑(かんがい)用水」を利用するのに対して、2号機は下流の自然環境を保護するために一定量を放流し続ける「維持流量」で発電する仕組みだ。水量の多い1号機には縦軸の水車を、水量の少ない2号機には横軸の水車を採用した。
北海道庁が運営する水力発電所の電力は長期契約で北海道電力に売電することが決まっている。契約期間は2010〜2019年度の10年間である。売電価格は必要な経費に適正な利潤を上乗せする「総括原価方式」で計算する。現在の電力会社が電気料金を決める方式と同じである。
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