水素社会実現へ、東芝が製造から貯蔵、発電・利用まで一貫して事業展開:自然エネルギー(2/2 ページ)
東芝は「水素」関連事業の強化に乗り出し、製造から貯蔵、発電・利用まで一貫したソリューションを提供する。「地産地消」型ビジネスと「サプライチェーン」型ビジネスに新たに取り組み、2020年度に水素関連事業で売上高1000億円を目指す。
水素「地産地消」事業とは
水素「地産地消」事業とは、水素の外部調達不要なエネルギーシステムを展開する事業を指す。再生可能エネルギーと水素電力貯蔵システムなどを用意し、これらを生かして水素を生成し、再び電力として利用するというエネルギー供給モデルを実現する(図4)。用途としては、離島や遠隔地など発電コストが高い地域向けや、災害対策などで活用するモデルを想定している。既にBCP(Business continuity planning、事業継続計画)対策としては、川崎市で実証実験を開始しているという(関連記事)。
また、このBCP対策で利用するコンテナサイズの自立型エネルギー供給システムは「H2One」として、2015年度上期中に発売する予定だ(図5)。再生可能エネルギーと水で水素を持続し電力とお湯を供給することが可能。災害時に約300人を収容する規模の避難所であれば7日間、電力とお湯を供給し続けられるという。自治体などに販売を計画しており価格は「数億円規模」(同社広報)としている(関連記事)。
水素サプライチェーン事業は2025年度から展開
水素サプライチェーン事業については、2025年度(2026年3月期)から展開を開始する計画(図6)。海外での大規模風力発電などにより安価に生成した水素を国内に輸送し、水素ガスタービン発電所で発電を行う水素サプライチェーンを構築する。これにより大電力網を整備することなくCO2を排出しないクリーンな電力を安定的に貯蔵、供給できるようになる。
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