北東北で発電事業を拡大するJR東日本、太陽光とバイオマスに続いて風力も:自然エネルギー
JR東日本は秋田県を走る羽越本線の沿線で風力発電を実施する。日本海の風から鉄道を守る林の中に、直径90メートルの大型風車を設置する計画だ。年間の発電量は1600世帯分に相当する。2016年の秋に運転を開始する予定で、北東北で推進する再生可能エネルギーの導入を加速させる。
JR東日本は秋田市に所有する「鉄道林」の中で、2014年3月から風況調査を実施してきた。高さ50メートルの位置で風速や風向を1年間にわたって調査した結果をもとに、満を持して風力発電設備の建設に乗り出す。JR東日本にとっては初めての風力発電事業である。
建設予定地は秋田県と新潟県を結ぶ羽越本線の線路沿いにあって、日本海から吹きつける風を防ぐ鉄道林の一部を利用する。建設する風車は直径が約90メートルの大型1基で、発電能力は2MW(メガワット)を予定している(図1)。風車を設置するタワー(支柱)は80メートルの高さがあり、風車の最高到達点は130メートル程度になる。
秋田県の日本海沿岸は風況に恵まれ、年間を通して強い風が吹く。すでに100基を超える大型の風車が稼働している。JR東日本が建設する風力発電設備では年間の発電量を580万kWh(キロワット時)と見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)で換算すると1600世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は33%に達して、風力発電の標準値20%を大きく上回る高い効率になる。
着工は2015年の秋で、1年後の2016年の秋に運転を開始する予定だ。発電設備の設計・施工から維持管理までをJR東日本が自社で実施する。今後さらに秋田県を中心に風力発電を拡大するために、企画・開発の専門会社「JR東日本エネルギー開発」を2015年4月中に設立することも決めた。
JR東日本は青森・岩手・秋田の北東北3県を対象に、「再生可能エネルギー基地」の展開構想を推進中だ。すでに秋田県で3カ所の太陽光発電所を稼働させたほか、青森県ではバイオマス発電所の建設を進めている(図2)。2020年までに北東北を中心に再生可能エネルギーの導入規模を100MW程度まで拡大する計画で、風力に加えて地熱発電の開発にも取り組んでいく。
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