開発が進まない林地をメガソーラーに転換、送電線も自営で敷設:自然エネルギー
兵庫県の山間部で開発がストップした状態の広大な土地がある。県がメガソーラーの候補地として情報を公開した結果、民間企業による発電事業が決まった。62万平方メートルの用地に5万5000枚の太陽光パネルを設置する計画で、年間の発電量は4500世帯分に相当する。
メガソーラーの建設予定地は、兵庫県のほぼ真ん中に位置する多可町(たかちょう)にある(図1)。周囲を中国山脈に囲まれた人口2万人強の町は面積の約8割を森林が占める。農業と林業が基幹産業で、最近は地域の活性化に向けてバイオマスを中心に再生可能エネルギーの拡大に取り組んでいる。
町の森林の中に開発途上のままの広い土地が残っていて、地元から有効活用を望む声が上がっていた。兵庫県がメガソーラーの適地と判断して情報を公開したところ、民間企業4社が共同で発電事業を実施することになった。2015年3月に県から林地開発許可が出て、4月中にメガソーラーの建設工事を開始する予定だ。
用地の広さは62万平方メートルにおよび、周辺は森林で囲まれている(図2)。この地域に多い農業用ため池が点在しているほか、一部の土地は造成途中の状態にある。利用できる土地の範囲に合わせて、太陽光パネルを分散して設置する。合計5万5000枚の太陽光パネルを使って、発電能力は14.5MW(メガワット)に達する見込みだ。
年間の発電量は1600万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して4500世帯分に相当する。多可町の総世帯数は7500世帯で、その6割をカバーする電力を供給できる。運転開始は2016年11月を予定している。
発電した電力は固定価格買取制度を通じて全量を関西電力に売電する方針だ。買取価格は2013年度の36円(税抜き)を適用できて、年間の売電収入は約5億8000万円になる。関西電力の送電設備まで3キロメートルにわたって自営の送電線を敷設して電力を供給できるようにする。
メガソーラーを運営する事業者は地元に設立した「多可町安田郷メガソーラー発電」である。東京センチュリーリースが43%を出資するほか、京セラ、三菱総合研究所、四電エンジニアリングが19%ずつ出資している。東京センチュリーリースが資金面を担当して、四電エンジニアリングが発電所を設計・施工する。京セラが太陽光パネルや周辺機器を供給しながら、三菱総合研究所が事業全体を統括する役割分担である。
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