下水の汚泥が年間3億3000万円の収入に、バイオガス発電を拡大する大阪市:自然エネルギー
下水処理の過程で発生する消化ガスを使って、発電事業に取り組む自治体が全国に拡大している。大阪市は市内4カ所の下水処理場でバイオガス発電を実施する。発電設備の建設から運転・保守までを民間事業者に任せて、市は消化ガスの売却収入と土地の使用料を得るスキームだ。
大阪市は5月1日に民間事業者3社と契約を締結して、バイオガス発電事業に乗り出した。下水処理場では大量の汚泥を減量するために発酵(消化)処理が必要で、その過程でメタンが主成分の消化ガスが発生する(図1)。
生物由来のバイオガスであることから、発電に利用すれば固定価格買取制度(FIT)の対象になる。この制度を利用して民間事業者が発電事業を実施する一方、大阪市は事業者に消化ガスを販売して収入を得る仕組みだ。対象になる下水処理場は4カ所で、発電能力を合計すると4090kW(キロワット)になる(図2)。
年間の発電量は2580万kWh(キロワット時)を想定していて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると7100世帯分に相当する。バイオガス発電の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)になるため、年間の売電収入は10億円にのぼる。運転開始は4カ所すべて2017年4月を予定している。
発電事業を請け負う3社のうち、中心になるのは大阪ガスグループのOGCTSである(図3)。発電設備の設計・建設・保守はバイオガス発電で実績がある月島機械グループが担当する。大阪市は費用をかけずに、消化ガスの販売収入と発電設備を設置する土地の使用料を合わせて年間に3億3000万円を事業者から受け取る計画だ。さらに発電に伴う廃熱を利用して温水の供給も受けて、汚泥の発酵に必要な消化槽の加温に生かす。
大阪市内には現在12カ所の下水処理場がある(図4)。そのうち2カ所(中浜、津守)では固定価格買取制度が始まる以前から消化ガス発電を実施して、処理場の中で電力を消費してきた。新たに4カ所で消化ガス発電に取り組むことで全体の半数に広がる。残る6カ所にも順次バイオガス発電設備を導入して収入の拡大を図る見通しだ。
関連記事
- 消化ガス発電が北海道にも広がる、固定価格買取制度で初めて
下水処理場で発生する消化ガスを利用した発電事業が全国各地で活発になっている。北海道では固定価格買取制度の認定を受けた初めてのプロジェクトが室蘭市で始まる。民間企業の資金とノウハウを活用したPFI方式で2016年4月に発電を開始する予定だ。将来は水素エネルギーも展開する。 - 下水処理のバイオガスで500世帯分の電力、自治体は支出ゼロで収入と温水を得る
自治体が運営する下水処理施設はバイオマス資源を大量に排出している。下水処理の過程で発生するガスは再生可能エネルギーになり、固定価格買取制度を適用すれば太陽光発電よりも高い価格で売却できる。長崎県の大村市は発電設備のメーカーと組んで2014年10月から発電事業を開始する。 - 電力・熱・水素まで地産地消、大都市のエネルギーを分散型に
革新志向の強い大阪では、電力会社に依存しない分散型のエネルギー供給体制の構築が着々と進んでいる。電力や熱の地産地消を推進する大規模なスマートコミュニティを湾岸の埋立地に展開する計画だ。さらに関西国際空港を中心に水素エネルギーの製造・消費でも日本の先頭を走る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.