「環境発電」で電池の交換が不要、温度や照度を無線で送るセンサー:省エネ機器
身の回りにある微小なエネルギーで電力を作る「環境発電」を取り入れた小型のセンサーを国内メーカー3社が共同で開発した。室内の光で発電できる太陽電池と厚さ4ミリのリチウムイオン電池を内蔵する。オフィスや家庭で温度・湿度・照度を測定して無線でデータを送ることが可能だ。
「環境発電」を採用した新しいセンサーは、日立マクセル、リコー、アルティマの3社が独自の技術を持ち寄って共同で開発した。リコーの「色素増感太陽電池」を表面に並べて、内部には日立マクセルの「シート状リチウムイオン二次電池」を備えている(図1)。
さらにアルティマが無線通信と温度・湿度・照度センサーの機能を組み込んで、7月にサンプル出荷を開始する予定だ。環境発電と無線通信によって配線や電池の交換を不要にした。これから市場が拡大するIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の端末として普及を図る。
センサーの大きさは115×63×13mm(ミリメートル)と小型で、オフィスや家庭の壁面などに設置して温度・湿度・照度を測定することができる。太陽電池は50×80mmのモジュールを使って340μW(マイクロワット)の電力を供給する。室内に散乱する照明などの微小な光を受けて発電できる点が特徴だ(図2)。リコーが複写機の技術を応用して開発した。
この太陽電池で発電した電力をシート状のリチウムイオン電池に充電して利用する。リチウムイオン電池は厚さが0.4mmと薄く、大きさも50×50mmに収まる。蓄電容量は45mAh(ミリアンペア時)で、太陽電池が供給する最大340μWの電力を長時間にわたって充電しても十分な容量がある。
温度・湿度・照度センサーには米国のシリコンラボ社とテキサス・インスツルメンツ社の小型チップを内蔵したほか、無線通信では同じく米国のリニアテクノロジー社とブロードコム社の低消費電力モジュールを搭載した。日米の最先端技術を集めた製品で、現在のところ量産出荷を開始する時期と価格は未定である。
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