電力使用効率を2000倍へ、次世代通信規格「5G」に組み込まれる省エネ技術:省エネ機器(2/2 ページ)
エリクソン・ジャパンは2015年5月19日にメディア説明会を開催し、標準化が始まる次世代移動体通信規格「5G(第5世代移動通信)」において、大きな目標の1つとなる「省エネルギー化」の動きについて紹介した。
必要な時だけ送信する
これらの流れの中で、新たなネットワーク設計思想として重要視されているのが「必要なときだけ必要なデータを送信する」という考え方だ。現状の通信基地局では、データ通信量に関係なく常に大きな電力消費を行っているが、利用していない部分を「休ませる」ことにより消費電力量を低減しようという考え方だ(図4)。
これらの中で新しい設計思想として提案が進んでいるのが「Ultra-Lean Design(ウルトラリーンデザイン)」と「ビームフォーミング」だ。
現状の移動体通信ではシステム情報を常に送信しており、データ通信を行う通信端末がない場合などは無駄が発生していたが、Ultra-Lean Designはこのシステム情報を必要なときだけ送信するというものだ。ユーザーデータ送信に直接関係しない送信を最小化することで、定常的なデータ送信を抑え、それを消費電力削減につなげるという考え方をとっている(図5)。
必要なところにだけ送信する
ビームフォーミングはデータ通信が必要なところにだけ送信を行うという考え方から生まれたもので、データ通信が必要な端末のあるところに通信を集中させるというものだ。ビーム方向を変更できる自律的な送信技術やシームレスなビーム変換などの技術が必要になるが、1つの基地局で従来より広いエリアをカバーできる他、高いトラフィック容量、高いエネルギー効率を実現できるという利点があるという(図6)。
その他、システム制御信号とユーザーデータ通信を分けて送信できるようにすることで「広範囲のシステム制御は大規模基地局で行うが、より小さな基地局でユーザーデータ通信を行うことでネットワーク全体の消費電力量を低減できる」と藤岡氏は指摘している。
負荷に応じた形に変更することが重要
藤岡氏は「実装技術の進化など従来思想のままでも省エネルギー化は進化するが、抜本的な消費電力量削減を進めるには新たな設計思想が必要になる。その意味ではより小規模でネットワークや通信を管理できるようにし、負荷に応じた形に変えていくことが重要だ。また新たな設計思想であるUltra-Lean Designやビームフォーミングは抜本的な消費電力量削減に貢献するだろう」と述べている。現状では「ビームフォーミングについては、他企業も含めて同様の動きに進みつつあるが、Ultra-Lean Designについてはこれから提案していくという状況だ」と藤岡氏は話している。
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