地熱開発の補助金が全国28地域に、発電したら農業にも生かす:補助金
日本の貴重なエネルギー資源である地熱の開発プロジェクトが全国で活発になってきた。北海道から鹿児島まで28地域を対象に、政府の補助金を交付することが決まった。発電した後の蒸気や熱水を有効に利用することがテーマの1つで、ハウス栽培に地熱を生かす取り組みが各地に広がる。
経済産業省が地熱発電を全国に拡大するために、「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」を2013年度から実施している。3年目の2015年度も総額28億円の予算を投入して推進する計画で、第1次の交付対象に28の案件を採択した(図1)。北海道が最も多くて10件にのぼるほか、新たに関東地方では東京都の青ヶ島村、中国地方からは鳥取県の湯梨浜町が補助金の対象になった。
この補助金で実施する地熱開発の取り組みには2種類ある。発電後の熱水を利用する「ハード支援事業」と、地熱の利用に対する地域の理解を促進する「ソフト支援事業」に分かれる(図2)。いずれも費用の100%を補助する制度で、1件あたり最高で1億8000万円、最低で100万円の補助金を交付する。
例えば青ヶ島村では、村民を対象にした勉強会を開催しながら、地熱を利用した新しい事業の可能性を調査する予定だ。本州から南へ350キロメートルも離れた小さな島には200年以上も前に噴火した火山がある。現在でも地熱を使ったサウナを運営しているが、さらに利用範囲を拡大して村の活性化につなげる。
補助金の交付対象になった28件の中には、すでに地熱の利用方法が具体的になっているケースもある。代表例が北海道の森町のプロジェクトである。北海道電力の「森発電所」(地熱)から排出する85度の温水をハウス栽培のトマトやキュウリの生産に30年以上にわたって利用してきた。この温水の利用量に余裕があることから、新たに熱交換設備などを導入してビニールハウスに供給する温水の量を増やす。
このほかに岩手県の盛岡市や八幡平市、熊本県の小国町や鹿児島県の指宿市でも、発電後の温水をハウス栽培に活用するための設備の導入に補助金を生かす。大分県の由布市ではハーブの栽培に地熱を利用することを決めている。
世界で3番目に地熱資源が豊富な日本だが、エネルギー源として活用する取り組みは遅れている。東日本大震災を受けて再生可能エネルギーの拡大が求められるようになり、安定した電力を供給できる地熱の重要性に再び注目が集まってきた。
政府は地熱開発の理解促進と資源開発の補助事業に乗り出したほか、発電事業者に対する出資や融資、地熱発電技術の研究開発、さらには大規模な地熱発電所の建設に必要な環境影響評価の迅速化にも取り組む(図3)。2015年度は地熱関連で5つの事業に、前年を65億円も上回る総額287億円の国家予算を投入する予定である。
このうち地熱開発の理解促進に向けた補助金は3回に分けて公募する見通しだ。第2次の公募は5月29日(金)から始まっていて、6月30日(火)の正午に締め切る。
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