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太陽光の発電コストを2030年に7円へ、5年間の技術開発プロジェクトが始動蓄電・発電機器(1/3 ページ)

日本の再生可能エネルギーを牽引する太陽光発電のコスト低減に向けた新プロジェクトが始まった。NEDOが2015〜2019年度の5年間をかけて、メーカーや大学などと共同で太陽電池の性能と信頼性の向上に取り組む。2030年までに火力発電のコストを下回る1kWhあたり7円が最終目標だ。

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 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に推進する太陽光発電の技術開発が新たなフェーズに入る。太陽光発電のコスト低減に向けた高性能・高信頼性の技術開発プロジェクトを2015〜2019年度の5カ年計画で推進していく。初年度の実施体制と開発項目が6月4日に明らかになった。

 シャープやパナソニックをはじめ国内の太陽電池メーカーがそろって参画するほか、東京大学や産業技術総合研究所など主要な大学・研究機関も加わり、オールジャパンの体制で太陽電池の性能と信頼性の向上を目指す。太陽光発電のコストを2020年までに電力1kWh(キロワット時)あたり14円へ、さらに2030年には火力や原子力よりも低い水準の7円まで低減することが目標になる(図1)。


図1 太陽光発電コストの低減目標と実現シナリオ(非住宅用の発電システム)。出典:NEDO

結晶シリコンと化合物の技術開発が中心テーマ

 新プロジェクトの初年度にあたる2015年度は5つの研究開発項目を設定した。その中で最大の課題になる太陽電池の性能と信頼性の両立を図るテーマが2つある。1つ目は現在の太陽電池で主流になっている結晶シリコンタイプの製造コストを低減する技術の開発だ。京セラやシャープなどメーカー8社が連携して、「先端複合技術型シリコン太陽電池」を開発する。

 この分野の代表例が「ヘテロ接合バックコンタクト型太陽電池」である(図2)。物性の異なる結晶シリコンとアモルファス(非結晶)シリコンを組み合わせて、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を高める。さらに太陽電池の電極を裏面に集約するバックコンタクト型にして、受光面を広く確保する構造で太陽光エネルギーを多く取り込むことが可能になる。


図2 「先端複合技術型シリコン太陽電池」の実現例(ヘテロ接合バックコンタクト型太陽電池)。出典:NEDO

 もう1つのテーマは結晶シリコンよりも変換効率を高くできる化合物タイプの技術開発だ。ケイ素(Si)を主体に作るシリコンタイプと違って、複数の元素を組み合わせて太陽光の幅広い波長を吸収できる点が化合物タイプの特徴である。新プロジェクトでは2つのグループに分かれて化合物タイプの技術開発を進めていく。

 化合物タイプの太陽電池は元素の特性で組み合わせを決める。第1のグループはガリウム(Ga)などの「III族」に含まれる元素と、ヒ素(As)などの「V族」に含まれる元素を組み合わせる予定だ。複数の層に分かれる化合物を効率的に積み上げる技術などを開発して、製造コストを低減させることが目標になる(図3)。シャープやパナソニック、東京大学や産業総合技術研究所を含む産・学・官の12法人が開発を担当する。


図3 超高効率・低コストの「III−V化合物太陽電池」の積層例。出典:NEDO

 化合物タイプの第2グループはロシアの科学者が発見した「ペロブスカイト構造」と呼ぶ薄膜で太陽電池を作る(図4)。化合物の素材には酸化チタン(TiO2)などを使う。太陽電池を薄膜で作ることができるために、塗布やロール印刷など低コストの製造方法を利用できるメリットがある。パナソニックや東芝に加えて、積水化学工業や富士フイルムがプロジェクトに参画する。


図4 低コストの「ペロブスカイト太陽電池」の構造例。出典:NEDO
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